第三十二話 少年期N
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かったなぁ」
アリシアのこぼした呟きに、俺もそうだな、と同意する。学校に入学してから気づいたことだが、エイカと少女Dは一緒にいない。少女Dはこことはちがうベルカ関連の学校に入学したと昨日の集まりの時に教えてもらった。公園で遊べることにはかわりないが、やはりちょっと寂しくはあった。
そしてエイカは、学校自体に通っていないらしい。いつも通りちきゅうやで店番をしていたと店主さんから教えてもらった。学校は義務教育ではないのだから、通っていないことがおかしいわけではない。だけど、大抵の子どもは行っている場所なのだ。依然の態度から、学校のことについてあまり触れてほしくなさそうなのはわかる。でも、何もアクションを起こさないというのも不審がられるだろうか。……こっちはどうしたもんか。
「お兄ちゃん?」
「ん、あぁ大丈夫だよ。少女Dの学校とは時々交流会があるらしいし、イベントでいっぱい遊べるさ。それに、なんだったら今日はみんなで探検ごっこして遊ぶのもいいんじゃないか。きっと楽しいぞ」
「わぁ、面白そう! あ、でも今日もエーちゃん来てくれるかな」
「一応声はかけているから来るんじゃね。いなかったら、デバイスの拡声機能で迷子のお知らせを流せばとんでくるさ」
そんな風におしゃべりをしながら、俺たちは階段を上っていった。そして、渡り廊下を通った先に『図書室』と書かれているプレートを見つける。こうして迷わず来れたのも、メェーちゃんと少年Eの案内のおかげである。今日2人が朝遅かったのが、図書室を覗きに来ていたことが理由らしい。
「2人とも本が好きなんだね。俺は文字ばっかりだと眠くなっちゃうよ」
「あらそんなのもったいないわ、アレックス。本は素晴らしいんだから! 過去から続く培われてきた歴史や英知を感じ取れる瞬間。自分とは違う価値観や思想を知ることで、自分というものを見つめ直すことができる喜びだって―――」
「リトスもメリニスみたいに本の虫なのか?」
メェーちゃんの本の虫スイッチを踏んでしまった少年Aが、涙目で助けを求めてきたが全員でスルーして少年Cの会話にのる。少年Eは無言でメェーちゃんを一瞥し、静かに首を横に振った。さすがにここまでではない、と無表情ながら誰もが彼の心の声を感じ取った。
「こら、君たち。図書室の入り口で固まっていたら他の人の迷惑になるよ」
「え、あっ、すいません」
図書室の扉が開き、そこから出てきたのは上級生の女生徒だった。俺たちはその注意を聞いて慌てて謝り、口を閉ざす。そんな俺たちの様子に「いい子だ」と女生徒は口元に笑みを浮かべた。
「ここは様々な学年の者が、調べ物や勉強をするために集中する場所だ。次からは気を付けるようにな」
「はい。すいません、先輩」
「素直でよろしい。それと、いき
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