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真・恋姫無双 矛盾の真実 最強の矛と無敵の盾
崑崙の章
第3話 「治療できないからです! 少し黙って!」
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た野次馬の中から、宿の女将さんが手伝いを申し出る。

「アンタもいい年なんだからそれぐらい我慢しな! こんなの子供産むのに比べりゃ全然痛くないだろ!」
「もごーーーっ! もご、もごっ、もごも!」
「何言ってんだかわかんないよ!」

 女将さんがはっぱを掛けながら足を押さえる。
 ありがたい。
 こういうときにどっしりと声を掛ける人の存在は、患者とって何よりの力だ。

「傷のなかに泥や石はなし……」

 暴れたことで流れ出る血を丹念に拭き、体の内部の出血は先程作った生理食塩水で洗い流す。
 このままでは傷口が小さすぎて血管を出せないため、火で消毒した小刀で傷を少しだけ大きくする。

「ど、どうして斬るのですか!?」
「治療できないからです! 少し黙って!」
「もごっ……!」

 背中の傷を少しだけ開く。もちろん血管や筋肉などには傷をつけない様にだ。
 背中の筋肉を優しく素手で掻き分け、出血の原因である太い血管を見つける。

 筋肉や血管が断裂しているわけではなさそうだ。
 しかも出血場所は一箇所だけ……運がいい。

 縦に裂けた血管から血が流れないように、血管の上下を糸で縛る。
 血を生理食塩水で洗い流して……針で縫合する。
 急がないと壊死してしまうから、時間は掛けられない。

「もー! もごーっ! もごぉっ……!」
「まさか研修で行かされたラムディのじいさんに、無理やり覚えこまされた医療術がこんなところで役立つとはな……」

 思わず呟く。
 『神を宿す手を持つ男』スプリガン屈指の殺し屋であり、世界一のドクターでもある男、パーカップ・ラムディ。
 彼のところで一刀と共に働かされた二ヶ月は、すさまじく実践的で。
 どこかの無免許医並に手術もやらされた。

「十代の若者に何十という外科手術させる違法医師なんて、いねーよ……ったく!」

 まあ、そのおかげで多少の怪我なら、自分で簡単に処置できるようになったんだが。
 血管を縫合するときは……繊細かつ大胆に! そしてしっかりと絞る!
 でないと、縫合部位から漏れるからね。

「何ブツブツ言ってるんだい?」
「なんでもありません……よっと。よし、出血は……ないな。縫合します」

 結索していた糸を解いて血を流して出血の有無を確認。
 出血がないことを確認して、生理食塩水で傷口を洗う。
 本当は完全密封した生理食塩水が欲しいところだが……そんな便利なものはない。

「さてと……まだ痛みますよ。しっかり身体を押さえて置いてください」

 何しろ今度は表皮を縫合するんだ……しかも埋没法で。
 麻酔なしだと、めっちゃ痛いぞ、これ。

「では……」
「もごっ!」
「出して……」
「もごっ!?」
「また刺して…
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