異典:第二次聖杯大戦・前編
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る。
「へぇ、そりゃ大変だな」
対する荒眞は己の師匠でもある一輝の愚痴を他人事のように受け流そうとした。
「ああ、大変なんだよ。――お前がな」
「――は?」
一瞬、荒眞の思考が止まった。
「だから、お前が殺りにいくんだよ。あーあ、せっかくのパシ??弟子が…勿体ねぇ…」
追い討ちをかけるように一輝は言い放つ。
そこまで言われてやっと思考が動きだしたのか、荒眞は慌て始めた。
「ちょっと待て! なんで俺が行かなきゃ行けねぇんだよ! お前が頼まれたんだろうが!」
と、半ばキレながら一輝に詰め寄った。
詰め寄られた一輝はどこ吹く風で他人事のように答えた。
「引き受けはしたが俺がやるとは言ってねぇ。アレだよ、たらい回しってヤツだ」
「てめぇ、それでも魔術師か!」
「魔術師関係ねーよバカ弟子」
「ざけんな! 俺ぁやらねーぞ!」
ぎゃあぎゃあと騒ぐ弟子に業を煮やしたのか一輝は荒眞の胸ぐらをつかみ引き寄せた。
「いいかげんにしろよ、てめぇ」
まっすぐ荒眞の目を見据え一輝は凄む。
「…ッ」
さすがに荒眞も一輝の剣幕におののいていた。
荒眞が大人しくなったのを確認した一輝は胸ぐらを離し、乱暴に離された荒眞は尻餅をついた。
「いって、テメ―ぶ!」
文句を言おうとした荒也だが間髪入れずに、顔面に物を投げつけられた。
「ソレ、サーヴァントの触媒だから大切にしろよ」
「だったら投げんな!」
そんな荒眞の怒鳴り声を気にする様子もなく、焚き火を消した一輝は出発の支度を始めた。
「…おい」
「何だ? お前も支度しろよ?」
「いや、どこ行くんだよ」
鼻を押さえながら荒眞は一輝に尋ねた。
「俺は時計塔、お前はポルトガル。オーケー?」
「いや、なんでだよ。報告でイギリスにお前が行くのは解るが、俺がポルトガルに行くのはなんでだよ」
荒眞も渋々荷造りを始めながら一輝に聞く。
「その触媒で呼び出せる場所として相性が良いのがポルトガル…だったかな?」
「おい」
一輝のいい加減な説明にドスのきいた声で尋ねたが、またしても一輝は柳に靡く風のように受け流した。
呆れて少し冷静になった荒眞は触媒について聞いた。
「で。これで召喚されてくるサーヴァントはどんな奴なんだ?」
それを聞いた一輝は――荒眞が見る限り初めて――ニヤリと口を歪ませて言った。
「目には目を。歯には歯を。――異物には異物、ってな」
七月二八日 一五時四八分 イギリス
魔術の総本山、ひいては魔術協会の本部でもある時計塔のある一室で男二人がソファに向き合って座っていた。
「お願いします」
「断る」
頭を下げ、即答された男はおもむろに席を起ち、ソファの隣のスペースに移動し、土下座した。
「お願いします」
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