異典:第二次聖杯大戦・前編
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七月二九日 二二時三八分 インド
蒸し暑い夏の夜。
とある密林で男二人が焚き火をして灯りをつけていた。
片方の男は歴戦の戦士のごとく研ぎ澄まされており、もう片方の男はガラの悪い不良という表現がそのまま具現化されている男だった。
そして男二人は夕食をとりながら話していた。
「聖杯戦争?」
「正確には違うがな」
怪訝そうに質問した男、赤枝荒眞は自分の魔術の師である、壱宮一輝に疑問を投げかけたが、一輝は荒眞の疑問を訂正した。
聖杯戦争というモノは、七人のマスターと呼ばれる魔術師が、それぞれ七体のサーヴァントと呼ばれる英霊、過去に偉業を成した人物を一時的に肉体を与え現世に降臨させ、そのサーヴァントを使って殺し合い、最後に生き残ったマスターが聖杯と呼ばれる願望機、つまり願いを叶えるという聖杯というアイテムをかけて行うデスゲームというのが、“本来”の聖杯戦争である。
「普通の聖杯戦争とどう違ってんだよ?」
魚の丸焼きを頬張りながら荒眞は再び一輝に聞いた。
一輝は自分の分の魚の丸焼きをしっかりと飲み込んだあとに荒眞の質問に答えた。
「まず、今回の聖杯戦争を始めたのは学生のガキどもだ」
ガキ。その単語を聞いて荒眞は怪訝そうな顔をした。
「聖杯戦争ってガキでもはじめられんのか?」
「そんなわけないだろう。魔術の知識かじったガキがパンドラの箱を開けたってことだ」
荒眞の疑問を一輝は両断した。
「別にガキが命かけて喧嘩しても問題ねぇんじゃねーか? どうせ後始末は協会がすんだからよ」
お構いなしに荒眞は今晩三匹目の魚の丸焼きを頬張った。
「俺も最初は静観を決めこもうと思ってたんだがな……ここからが問題でもあり本題だ」
一輝は心底面倒臭そうにため息をつきながらも本題を切りだし、不思議そうな顔をしている荒眞を一瞥したあと、骨となった魚の丸焼きを焚き火の牧にくべて、続ける。
「首謀者のガキが聖杯戦争の別のルールを適用しやがったんだ」
「別のルール? 何だそれ」
「掻い摘んで言うとだな、そのガキは聖杯戦争をかつてルーマニアでやった七対七でやるチーム戦の聖杯“大戦”にしちまったことだ。さらにタチの悪ぃことに呼び出したサーヴァントが“この”世界のモノじゃないってことだな」
サーヴァントは原則的に英霊の座と呼ばれる空間に存在している。過去実在したとされる歴史上の偉人、もしくは神話などの伝承上の人物が召喚されるのが常識なのだが…
「…マジか」
喚び出された英霊が今いる世界の英霊でないというのであれば、荒眞が驚くのも無理はない。
「大マジだ。先走った聖堂教会の連中が確認して、協会に責任を押し付けたのを俺に回してきやがった」
一輝は心底面倒だ、とため息と共に愚痴
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