第8話 次は北の森だそうですよ?
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粉を振りまいて命を散らす。
風に舞うが如き白き羽根に、音速の壁すら突破するとさえ言われている蠅が絡め取られ、そして、短いその一生を終えた。
そう。数万、数十万が集まろうとも、所詮は蟲。完全に侵入を防ぐ結界を周囲に施せば、リューヴェルト自身が害される心配は殆んどない。
但し……。
但し、この状況はかなり大きな問題を孕んではいた。
それは、今回のギフトゲームのルール。森に棲む生命体を出来るだけ殺さずに、森を元の状態に戻すと言う、今回のギフトゲームの勝利条件の部分。
そして、この蟲たちは、間違いなく森に棲む生命体。
このような無意味な特攻に等しい行動でも、現実に、リューヴェルトが森の蟲たちの生命を奪っている事実に変わりはない。
「フィン。フェザーバリア解除だ」
何処までが許容範囲なのか判らないが、このままでは怪しい地点を発見する前に、ルールに抵触してギフトゲームに敗れる事となる。まして、最初に確認した段階では、蝶や甲虫。それに、蠅の類は存在していたが、蜂を確認はしていない。
蜂が存在していないのならば、一瞬、身体に集られても、その後に高速移動を行って振り払えば……。
自らの生命に関しては問題がない。そう考えたリューヴェルトの周囲から、彼を護って居た全ての白き羽根が失われた刹那。
竜を統べる王を覆い尽くす蟲、蟲、蟲。
蝶の色取り取りの鱗粉が陽光を霞ませ、弾丸の如きスピードで突進して来る甲虫が身体全体を叩く。
そして、目や鼻を覆い、口の中にまで入り込んで来ようとする蟲たち。羽音が耳を突く気圧の拳のように感じ、身体中に纏わり付く蟲のモゾモゾとした感触がリューヴェルトの意識を別の世界へと誘おうとする。
必死にそんな蟲を右手で追い払い、瞳を閉じて、左手で口と鼻の部分だけでも手で覆い隠しながら、呼吸だけでも護ろうとするリューヴェルト。
そう。相手は高が蟲。
重力の法則を利用して一気に高度を下げ、身体中に取り付いた蟲たちを振り払おうと……。
身体の自由が利かなく成りつつある事に気付いた。
これは――――
蝶の鱗粉に何か毒に類する物質が含まれて居た。そう薄れ行く意識の中で考えたのを最後に、彼はその意識を完全に手放していたのだった。
☆★☆★☆
しゃらん。
何処からか聞こえる鈴の音に、途絶えていた意識が覚醒に向かう。
その涼やかな音色に高と低。二人の少女の言の葉が重なる。
「かくかがのみては気吹戸にいます気吹戸の主という神。根国底国に息吹放ちてむ」
言葉のひとつひとつが発せられる度に、リューヴェルトの呼吸は少し楽になる。
そして、力を入れる事さえ難しかった手に力が戻った事を感じる。
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