第8話 次は北の森だそうですよ?
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そして、最後に自らは確かに土行ですから。
それでも……。
「相談の最中、悪いんやけどな」
やや否定的な結論に美月が到達しようとした瞬間、今度は、一同の足元に存在していた白猫が猫ゆえの身軽さを発揮し、ハクの肩の上に飛び乗りながら、そう話し掛けて来た。
そう言えば、先ほどから白娘子は結界の維持を行っていない。
完全に安全圏に居る事を良い事に思考の海に沈み込んでいた美月が、一度、現実界に思考を戻し、周囲の様子の再確認を行う。
陽光は春の午前中を示す麗らかな陽光。
風は適度な湿り気を帯び、昨日までの黄泉の国から吹き付ける穢れを纏う事はない。
そして……。
そして、妖樹は操っていたその触枝の動きを止め、まるで美月たちの次の行動を窺うかのような雰囲気を漂わせている。
いや、それドコロか……。
「ヤツラ、ウチらの事を邪魔する心算はないみたいやで」
そう言いながら、顎を僅かにしゃくって見せるタマ。
その指し示す先。其処には、緑の魔界の奥深くに続く、暗いトンネルが出来上がっていたのだった。
☆★☆★☆
彼女は疑問を感じて居た。
眠りながら。微睡みながら。
そう。仲間を、友を。そして生涯の伴侶を求める事は、果たして、それほどに大きな……大それた願いだと言うのだろうか、と……。
浅い眠りの中で、誰に問い掛けるでもない疑問を、ただ繰り返し、繰り返し考え続けていた。
☆★☆★☆
ふわり、と言う表現が一番しっくりと来る表現で、森が動いた。
いや、これは森が動いた訳では無い。
魔界の木々から飛び立った小さな蟲たち。その種類も様々。
春の野を舞うに相応しい蝶も居れば、大きな羽が空気を鳴らす甲虫の類。そして、蒼穹を飛ぶ虫の中では最速と言われる蠅の種類も存在していた。
但し……。
但し、リューヴェルトを取り囲むように接近する蟲たちの様子から察するに、彼らは明らかに、リューヴェルトの事を敵と認識している。
万の羽音を響かせて、正に雲霞の如くリューヴェルトに迫り来る蟲。そのおぞましき響きに、思わず背筋が凍るかのような不気味な何かを感じる。
そう。その一糸乱れぬその動きは、蟲と言う因りは何か別の存在。まるで、体内に入り込んだ異物を排除する免疫細胞のような動き。
こいつらに取って、俺は森内に侵入した異物と言う事か。
「フィン。フェザーバリア」
慌てる雰囲気すら感じさせず、冷静なリューヴェルトの言葉が発せられた瞬間、彼の周囲に舞う白き鳥の羽根。
そして、その白き結界と、黒き靄にも等しい蟲たちが、今――――。
接触した。
白き羽根に触れた蝶が、一瞬の儚い抵抗の後、微かな鱗
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