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私は何処から来て、何処に向かうのでしょうか?
第8話 次は北の森だそうですよ?
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 軽くため息を吐きながら、普段通りの答えを返そうとした美月。

 しかし、其処に軽い違和感。

 そう。そもそも、自分とハクと名乗った少女は出会ってから今日で三日目。それ以前に、美月はハクが何処でどのような生活をしていたのかさえ知らない。
 それなのに何故か、今の一瞬だけ自分は、ハクの事を昔から知って居るような。そんな気がしたのだ。

 そんな事を考えた美月の事を不思議そうに見つめたハクは、

「確かに、そんなに簡単に行くとは思えませんね」

 ……と、そう、あっさりと答えた。
 まったく悪びれる様子もなく、その上、普段通りの穏やかな雰囲気で。

 但し、やっぱり思い付きだったんだ。何故か、確信を持ってそう考えた美月。
 この場に()()()が居てくれたのなら、もっと良い方法を考えてくれたのに。

「それでも、この森と人間との間の絆は結び直す必要が有りますから」

 そんな、美月の考えに気付いているのか、いないのか。少なくとも、現在の場の空気を読んだ発言でない事だけは確実な台詞を口にしたハク。
 そして、その言葉は事実。このまま、この異常な状態の森を捨て置けば、少なくともコミュニティ白き光は、そう遠くない未来にこの森に呑み込まれる。

 そう。皮肉な事だが、今までは西から吹く死の魔風(かぜ)が、この森の進捗を阻んでいたのは間違いないのだから。
 妖樹の侵攻を阻んでいたのは、村に乾燥をもたらせていた死の風。妖樹とは言え、そこは樹木の属性を持つ存在。すべてを乾かせ、死へと誘う風との相性はすこぶる悪かったのだ。

 しかし、その魔風に因る阻害が無くなり、白娘子により、水だけは徐々に豊富と成りつつある今のコミュニティ白き光に、この死の森の侵攻を止める手段は存在しない。

 形の良い眉根を顰めるように、そう考え込んで仕舞った美月に対して、ハクは、普段通り春の陽光に等しい笑みを魅せた後、

「この森の中心に存在する龍穴。そして、其処から四方に伸びる地点に存在する龍穴を使用して、龍脈を作り変えます」

 ……と、あっさりと伝えて来た。
 あの頃のままの、何処に根拠が有るのか判らない、自信に満ちた言葉使いで。

 そして、彼が語った台詞は、彼女の知って居る範囲内では違えられた例はない。

 しかし……。
 しかし、そんな事……。龍脈を作り変える。などと言う事が本当に――――

「ここに居るのは、木、土、金、水を示す存在しか居りませんぞ、ハクさま」

 可能なのか。そう言う考えが美月の頭に浮かんだ時、それまで、結界の構築に精神を費やしていた白娘子が問い掛けて来た。
 そう。ハクが青龍の属性を持つのなら木行。白娘子は間違いなく水行。タマは彼女の属性から考えると金行。

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