第8話 次は北の森だそうですよ?
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声を賛美してくれる存在は居た。
そして、彼女の友や、それ以外の関係の相手も当然居た。
しかし、彼女の周囲に居た存在たちは、大抵が自分の事ばかり考えて居て、周囲の出来事や、考えなどにはまったくの無関心。
まして、彼女が今、何を考えて居るかなど、斟酌してくれる連中などでは無かった。
そして、彼女はその様な連中の事が、本当は好きではなかった。
☆★☆★☆
伸びて来る蔓が何物……。ハクや美月の目の前に発生した不可視の壁に阻まれて、その接近を阻まれて仕舞う。
そう、大地を走る蛇の如くいやらしくしなり、寄り集りながら接近しつつ有った触手……いや、触枝と言うべき蔓が、ハクや美月に襲い掛かろうとした正にその刹那、彼女たちの目の前の何もない空間に現れた光輝く魔術回路によって反射され、無効化されて仕舞ったのだ。
但し、昨日経験した西の街道に比べると、今の状況で比べるのならそれほど危険な状況とは言えない。
しかし……。
「ねぇ、ハクちゃん」
森と、未だ森に呑み込まれていない荒地との境界線上に立ち、美月は目の前に存在する異様な森と、話し掛けている少女の姿を順番にその碧眼に映して行く。
確かに、今の状況では危険な状況では有りません。森の周辺部にまで顕われた妖樹による攻撃も、ハクや美月が何か手段を講じずとも、ハクのお供としてついて来た白娘子が施した結界術のみで捌き続ける事は可能。
但し、それは未だ森と荒地の境界線上に美月たちが存在しているから。
もし、一歩でもあの死の森と呼ばれている森に踏み込めば、この程度の危険で収まる訳はないのだ。
昨日の黄泉比良坂内での戦いから考えるのならば。
そうしてハクの返事を聞く前に、美月は更に続けた。
決定的な台詞と成るその一言を。
「この森を前にしても、自然との絆を結び直す事が出来るって言うの?」
ゆらゆらと揺れる大きくて黒い蔦。緑色の粘液状の何かを、その幹のアチコチに存在するウロから滴り落としている妖樹。
まるで植物と言うよりは生物。一種の食虫植物がグロテスクな進化を極めたモノのような雰囲気さえ漂わせる異形の生命体。
どう考えても、今、自分たちの前に立ちふさがるモノは、真っ当な世界の理の中で存在している樹木と思えるモノではなかった。
「最初に大祓の祝詞を唱和してみましょうか?」
小首を軽く傾けてそう答えるハク。その姿は、彼女の容姿と相まって非常に愛らしいのだが、その実、何か考えが有って行動しているのか、それとも、行き当たりばったりで行動しているのかまったく判らない答えで有った。
「また、そんな事ばっかり言って。本当にアンタは昔っから――――」
結果オーライのお気楽極楽なんだから……
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