第8話 次は北の森だそうですよ?
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やや視線を上げるだけで終わる朝の角度を示し、遠くの方から雲雀の歌声が聞こえて来る。
春の日の始まりに相応しい爽やかな朝の風景に、大河から吹き寄せる心地良い風が、少女たちの長き髪の毛を撫でて行った。
その瞬間。
「ハクさま」
何時の間に顕われたので有ろうか。突如、一同の背後に現れた白娘子が、自らの主。お互いの真名を賭けた勝負に負けた事に因り、真名を教えた相手に声を掛けた。
西からの死を招く風が止み、東からの水の恵みを得たこの辺境に属する村の入り口。
今、正にハクと、このコミュニティのリーダー。金髪碧眼の少女美月と、そのお供。白猫のタマが村を出て、何処かに向かおうとしたその瞬間に。
そうして、
「今日は北の森に向かうと話を聞きましたが、誠でしょうか?」
少し生真面目で、やや堅物じみた雰囲気の台詞で問い掛けて来る白娘子。
しかし、それも仕方が有りませんか。
彼女を示す名前の白娘子とは中国に伝わる伝承に登場する白蛇の精。愛した人間の為に己の命すら捨てる存在として描かれた存在。
故に、水を現す色。黒を名に冠するのではなく、義を意味する白を名に冠するのでしょうから。
「はい。精気を失った土地を元に戻すには、自然と人間との絆を取り戻す必要が有りますから」
ハクがごく自然な雰囲気でそう答えた。
その言葉に一切の気負いなど感じさせる事もなく。ごく近くの森に散策に出かけるような雰囲気で。
但し、そのコミュニティの北に広がる森と言うのは……。
☆★☆★☆
かつて彼女は、多くの者に。自らが創り出した者たちに賞賛と賛美を受ける存在で有った。
しかし、彼女はそんな物を望んでは居なかった。
そう。彼女は自分自身の事をとても小さな存在だと感じていたのだ。
とてもとても小さくて、
そして……。
☆★☆★☆
「ここが、踏み込んだ人間が二度と出て来られなくなると言う死の森ですか」
遙か眼下に広がる太古より続くと思われる森を睨め付け、そう独り言のように呟く青年。
鳥の如き翼を持つ金髪に青い瞳の青年。コミュニティ翼使竜のリーダー、リューヴェルトで有った。
流石に、恒星の表面積に等しいだけの広さを持つと言われている箱庭世界。一口に辺境とは言っても、その姿は千差万別。砂漠に等しい地も有れば、大海に等しい地形も有る。
まして、この眼下に広がる密林は、どう考えたとしても人跡未踏の地。
太古より人の手の入らない、産み出されたままの自然が支配する森を思わせる眺望が、この地の北に存在する山脈まで続いて居たのだった。
但し……。
「ここがかつて。たった五年前まで人の手に因
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