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ストライクウィッチーズ1995〜時を越えた出会い〜
第二話 タイムスリップ
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ていた筈だ。だとするなら、自分が訓練空域からはみ出したのか。それならそれで基地からの通信があっていいようなものだろうに……

「ダメだ……通信もGPSも軒並み使い物にならなくなってる……」

 正確には、通信は生きているものの拾える周波数が送られてきていないようであり、GPSは信号をキャッチできていないようなのである。レーダーは一応のところ機能しているようだが、現在位置を特定するには情報不足だった。

「ユニットは問題なし、武装と火器管制もオールグリーン……ダメなのは電装系? でも機体コントロールと火器管制に異常はないし……」

 ともかく、一刻も早く訓練に戻らねば。仮にここが民間人の住宅街の上空だとしたら後々面倒である。和音は耳元のインカムを片手で抑え、周波数を全周波に切り替えて通信を飛ばす。

「こちら、扶桑皇国空軍第7航空団第305飛行隊所属、沖田和音少尉。百里基地、聞こえますか?」
『………………………………』
(おかしい……応答がない? そんな馬鹿な)

 基地の無線が捉えられないような場所にいるとでもいうのだろうか?
 訝しげな表情を浮かべた和音は再度通信を試みる。

「こちら、扶桑皇国空軍第7航空団第305飛行隊所属、沖田和音少尉。百里基地、聞こえますか? リベリオンウィッチ隊、応答してください」
『……ら、扶桑……軍…所属、坂……少佐……在、ネウロイ……救援を……』
「っ!?」


 耳元のインカムに途切れ途切れな通信が届く。しかし、この切迫した雰囲気は何だ?
 和音が眉を寄せたのも無理はない。途切れがちな通信の中で、相手ははっきりと『ネウロイ』という単語を口にした。これではまるで本当にネウロイが攻めてきているみたいではないか。ネウロイ大戦など既に終結した過去の記録に過ぎず、いかに演習とは言えそこまでの演出をしようものなら逆に文句を言われるはずだ。
おまけにいったいいつの時代の通信機を使っているのか、音質も最悪だ。1940年代ならいざ知らず、ニュー・ミレニアムを目前とした90年代のウィッチとは思えないほどお粗末だ。倉庫で埃をかぶっているような訓練機だってもう少しマシな筈だ。

(いったいどこの訓練生なの? まさか訓練中に空域に入ってきた?)

 機位を逸したどこかの訓練生が、合同演習の空域に紛れ込んできたに違いない。いらだちも露わにした和音が、魔道エンジンを大きく吹かして急降下する。
 雲の上では一向に位置がつかめない。ともかく、周囲を見渡せる雲の下に出なくてはどうにもならない。依然として耳に響く通信を聞き流しながら、和音はぐんぐん高度を下げていった。

 ――そして彼女は出会う事となる。
 遠い時の果てに忘れられた、儚くも勇敢で美しい、伝説の魔女たちと。

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