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ストライクウィッチーズ1995〜時を越えた出会い〜
第一話 1995年
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「はい! ありがとうございました、隊長!」
『沖田少尉! 発進準備!』

 格納庫中に響き渡る指示に、和音はあわてて愛機に飛びつく。
 魔法力が体の内を駆け巡り、大切な相棒たる使い魔を憑依させる。和音の使い魔はオオワシだった。魔法力の発現とともに、側頭部からは雄々しい羽が、臀部からも可愛らしい尾羽が飛び出てくる。
 基地の人間は和音の事を指してオオワシ使いのF-15乗り≠ニ呼んでいるが、なかなかにうまい表現かもしれない。

「さあ、待ちに待った出番だ。行ってこい、沖田!」
「はい!」

 開け放たれた格納庫の扉から滑走路に進入し、所定の位置につく。
 すでに相手のウィッチは発艦してきている。つまりはスクランブルを想定しているわけだ。

「こちら沖田。発進準備完了。いつでも行けます!」

 管制官に無線を送る和音。スクランブル発進はスピードが命だ。

『了解。沖田少尉、発進どうぞ』
「行きます――――ッ!!!!」

 魔道エンジンに目一杯魔法力を流入させ、蒼海を臨む滑走路を滑り出す。
 かかる加速に歯を食いしばり、十分に機速を稼いだところで一気に上昇に転じた。

「はあぁぁッ!!」

 気合の叫びも高らかに上昇し、先に発進した隊の仲間と合流する。そのまま編隊を維持し、発艦してきたリベリオンのウィッチを迎え撃つ。ここからが――本番だ。

『所定高度への到達を確認。両ウィッチ部隊は模擬戦闘を開始せよ』

(――来た!!)

 要撃訓練である以上、当然迎え撃つ≠アとも要求される。
 つまり、模擬戦闘というワケだ。

(扶桑魔女の力を見せてやる!!)

 和音がそう勢い込み、主武装である『JM61A1』を構えようとした、まさにその時だった。

「あ――れ……?」

 おかしい。体に力が入らない。
 視界がグルグルとまわりだし、酷い吐き気がこみ上げてくる。
 チカチカと視界が明滅し、眩暈に体がふらついてしまう。

(そんな、体調不良はなかったはずなのに……)

 緊張の所為だろうか? いや、違う。
 眩暈はますます酷くなり、目を開けている事すら辛くなってくるほどだ。
 不意に、和音の意識が遠のき始めた。その感覚はちょうど、眠りに落ちるというべきか、はたまた水底に沈むようなというべきか、ともかく全く奇妙な感覚であった。
 しかし、飛行中に意識を失うことは死に直結する。如何なウィッチといえど、上空から真っ逆さまに落下して無事でいられる保証などあるわけがない。
 だというのに、文字通り真っ逆さまに落ちてゆく和音の頭にそんな危機感は欠片もなかった。むしろ安らかさと優しさを感じるほどだ。何故だろうか、恐怖感など微塵も感じないのだ。

(ああ……なんて、気持ちいい……)

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