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ストライクウィッチーズ1995〜時を越えた出会い〜
第一話 1995年
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305飛行隊各員へ。本日の合同演習は予定通り行われる。速やかに所定の場所へ移動するように。繰り返す――』

 基地から響くアナウンスが、訓練開始の時刻が迫った事を教えている。
 空を飛ぶ喜びに胸を膨らませながら、和音は基地の格納庫へと駆けて行った。





 ――百里基地 ストライカーユニット格納庫前

 首都防空を主任務とする第305飛行隊は、必然的に要撃任務を意識した訓練が多くなる。しかし、それだけではなく他国の軍とも共同で訓練を行う事がある。
 今回の訓練は、ウィッチ同士による模擬戦闘と、編隊飛行訓練、要撃訓練が主体になる。
 まず、訓練に協力してくれたリベリオン海軍の空母からウィッチが発進。それを百里基地から発進した和音らが迎え撃つ、という形だ。所定高度への到達時間や、編隊飛行の練度、各種兵装の訓練射撃を行った後、実戦的な模擬戦へと移るのである。

「ふむ、沖田少尉は随分とヤル気のようだな、ん?」
「い、いえ! そのようなことは……」

 今や遅しと出番を待っていた和音の隣にやって来たのは、第305飛行隊の隊長であった。厳しくも優しい、細かいことを気にしない彼女を慕う隊員は多く、バレンタインや誕生日ともなれば部隊員のみならず一般の男性兵士からも贈り物が届くという。

「ははあ、さてはまた相手を叩きのめす気だな?」
「もちろんです! 扶桑皇国魔女の力を見せてやります!」

 模擬戦での勝率が高いのはウィッチとして優秀な証だ。少なくとも和音はそう思っている。
 実戦経験こそないものの、和音の訓練における成績は優秀であった。
 使用するユニットは『F-15J』である。元々はリベリオン製のジェットストライカーであり、それを扶桑の実情に合わせて改修したものだ。開発から二十年近い年月が経つにもかかわらず、堅実かつ拡張性の高い設計と、優秀な基本性能が評価される傑作機である。

「威勢が良くて結構。だがしかし、油断と慢心は命取りだぞ? それを忘れるな」

 この隊長も実戦を知らない世代だが、自身の祖母が扶桑海事変以降の大戦でその名を轟かせたエースであったのだという。彼女の口から語られる教訓は、他の教官や上官以上の説得力があった。

「空を飛ぶ人間は常に空を畏れるべきだ。それを忘れたら最期、無惨に地面へと叩きつけられる」

 どこぞの蝋の翼と同じさ、と付け加えると、隊長はほおを緩めて語りだす。

「だが、ウィッチにとって空は第二の故郷だ。自分の体で風を切って飛ぶあの感覚は、それは気持ちいいものだ。陽光に煌めく海の蒼など、もう言葉では言い表せないな」

 不意に照れくさそうな笑みを浮かべて隊長は言う。

「……コホン。まあ、なんだ。常に油断せず、思いっきり飛んで来いと言う事だ。期待している」
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