番外編
青騎士伝説 後編
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砕けそうに罅割れている。鎧本体も何か所もが凹んで傷んでおり、その耐久度の残り少ないことは明らかだ。そして何より、鎧の隙間に無数に刺さったナイフは明らかに彼のHPを、精神力を削ってる。あんな顔面にナイフが突き刺されば、普通のプレイヤーなら卒倒するだろう。
「……助ける……」
小さく、しかし力強く呟いて、ブーメランを手に取る。
その、重量や形状によって無数に分けられるレミの武器、その一つ一つの描く軌道が、はっきりと空間に浮かび上がって見える。そのいくつかを、続けざまに放つ。それぞれが異なる軌道を描く、初見ではまず対処不可能な連撃。
「―――ッ!?」
それはいくらか意表を突いたようで、相手の体を過たず切り裂く。
しかし。
「っ!!?」
相手はその連撃に手を、足を止めることなく、あまつさえ《投剣》で反撃してきた。
(この男、手ごわい…っ!)
《投剣》は、外れた。それはレミの投げたブーメランが「射手の手元に戻ってくる軌道を描いていなかった」からだ。連撃において、レミはわざとブーメランが外れるような投擲を放っていた。そのほうが相手の死角をつける軌道だったからだ。だが相手はその軌道を読んだうえで、返ってくる場所を予測して攻撃してきた。
《投剣》使いというだけではない。
この男、ブーメランという武器を知っているプレイヤーだ。
(……油断は、できない……!)
その間も視線を逸らさないレミの先で、相手の男もまた背中から武器を抜き放った。巨大な三日月形の……いや、三日月よりもやや急峻な曲りを描く、独特な形をした曲刀。レミの身長程度軽く上回りそうなその巨大な刃は、相当の重量……そして威力を感じさせる。
ぞわり、と背筋が震える。
悪寒のままに、立て続けにブーメランを放つ。
その、無数の刃が到達する、その直前に。
「ふぁーっ!!!」
視線の先で、振り下ろされた三日月がファーを的確に捕えた。
迸る、莫大な数の青のポリゴンエフェクト。
同時に、相手の……殺人鬼の視線が、こちらの視線と交錯する。
(しまった……! 投擲を、ずらすのを、怠った……!)
気づいた時には、遅い。見れば、既に相手の巨大な三日月が煌々とした黄金色の光を纏っていた。それは、レミにとってはとても、そう、嫌というほどに見覚えのあるエフェクト。何百、何千と繰り返した、そのソードスキルの光。
(……ブーメラン、の、スキル!?)
世界が、減速する。
レミの世界には、その巨大な三日月の軌道がはっきりと目に映る。
なのに、体は、まるで石になったかのように動かない。
レミのステータスは、筋力極振りだ。もとより俊敏な移動には向いていないのだ。
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