暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン 〜無刀の冒険者〜
番外編
青騎士伝説 後編
[10/14]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
砕けそうに罅割れている。鎧本体も何か所もが凹んで傷んでおり、その耐久度の残り少ないことは明らかだ。そして何より、鎧の隙間に無数に刺さったナイフは明らかに彼のHPを、精神力を削ってる。あんな顔面にナイフが突き刺されば、普通のプレイヤーなら卒倒するだろう。

 「……助ける……」

 小さく、しかし力強く呟いて、ブーメランを手に取る。

 その、重量や形状によって無数に分けられるレミの武器、その一つ一つの描く軌道が、はっきりと空間に浮かび上がって見える。そのいくつかを、続けざまに放つ。それぞれが異なる軌道を描く、初見ではまず対処不可能な連撃。

 「―――ッ!?」

 それはいくらか意表を突いたようで、相手の体を過たず切り裂く。
 しかし。

 「っ!!?」

 相手はその連撃に手を、足を止めることなく、あまつさえ《投剣》で反撃してきた。

 (この男、手ごわい…っ!)

 《投剣》は、外れた。それはレミの投げたブーメランが「射手の手元に戻ってくる軌道を描いていなかった」からだ。連撃において、レミはわざとブーメランが外れるような投擲を放っていた。そのほうが相手の死角をつける軌道だったからだ。だが相手はその軌道を読んだうえで、返ってくる場所を予測して攻撃してきた。

 《投剣》使いというだけではない。
 この男、ブーメランという武器を知っているプレイヤーだ。

 (……油断は、できない……!)

 その間も視線を逸らさないレミの先で、相手の男もまた背中から武器を抜き放った。巨大な三日月形の……いや、三日月よりもやや急峻な曲りを描く、独特な形をした曲刀。レミの身長程度軽く上回りそうなその巨大な刃は、相当の重量……そして威力を感じさせる。

 ぞわり、と背筋が震える。
 悪寒のままに、立て続けにブーメランを放つ。

 その、無数の刃が到達する、その直前に。

 「ふぁーっ!!!」

 視線の先で、振り下ろされた三日月がファーを的確に捕えた。
 迸る、莫大な数の青のポリゴンエフェクト。

 同時に、相手の……殺人鬼の視線が、こちらの視線と交錯する。

 (しまった……! 投擲を、ずらすのを、怠った……!)

 気づいた時には、遅い。見れば、既に相手の巨大な三日月が煌々とした黄金色の光を纏っていた。それは、レミにとってはとても、そう、嫌というほどに見覚えのあるエフェクト。何百、何千と繰り返した、そのソードスキルの光。

 (……ブーメラン、の、スキル!?)

 世界が、減速する。
 レミの世界には、その巨大な三日月の軌道がはっきりと目に映る。
 なのに、体は、まるで石になったかのように動かない。

 レミのステータスは、筋力極振りだ。もとより俊敏な移動には向いていないのだ。
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ