番外編
青騎士伝説 後編
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の端へと伸びる。
―――それは、三日月。
雨の中でも浮き上がるように煌々とした黄色の輝きをまとった独特の曲線を描く刃。それを構えたまま、背後から突きかかってきた『青騎士』の槍を紙一重でかわす。片方だけ残ったスリットの向こうの『青騎士』の眼光と、彼の視線が交錯。
そして。
「おおおおっ!!!」
背中から抜き放った三日月型の刃、《マーダー・クレセント》が振り下ろされ。同時にその禍々しい三日月を照らすように、無数の青いポリゴン片が、雨粒に反射して散らばっていった。
◆
(騎乗、とか……まったく、ホントに……)
何者なのか。
ファーに追いつくのは到底不可能と思われたその雨の行軍を可能にしたのは、ウッドロンの騎乗技術だった。二人乗りが可能な大型騎馬を軽々と乗りこなして駆けつけたウッドロンは「ごめんね〜! 痛くないように気を付けるから〜!」などという変質者御用達な声を上げて放り出すようにレミを馬から降ろしてそのまま大人数のほうへと突進していった。
(……落馬……ある意味、貴重な経験……)
そんなことを一瞬考えたが、すぐに気を取り直して戦況を見つめる。
雨による視界妨害を無効化する《ウンディーネス・モノクル》によってみた、その場。
(……まずは、人質の解放……)
集中してからのレミの行動は、まさに神がかり的だった。人間は人生でほんの数度だけ、まるで世界が減速したかのように錯覚するほどの加速感……たとえば、「ゾーンに入った」感覚……を覚えるという。それが本当ならば、レミにとってそれはまさに今だった。
(……世界が、見える……)
世界が、数字で見えている。空気の、雨粒の、その一つ一つの運動が、エネルギーが、流動が、まるで手に取るように分かる。腰に差したブーメランの取っ手を触れるだけで、その描く軌道が何もない空間に浮かび上がるように見える。
(この、ライン……)
最も適切なラインの、一本。
それはまるでこの世界には無い、一種の魔法のようにその軌道をなぞって飛ぶ。
飛ぶ。
飛ぶ。
(……きた)
三発の投擲ののち、ウッドロンからメッセージが、一通。
それを開きはしない。
(……一通なら、「もう大丈夫」。二通なら、「援護求む」)
あらかじめ決めていたからだ。
二通目が来ないことを確認して、視線を戦場へと移す。
「……ファー……」
相手の首領なのだろう、黒いフーデッドコートと対峙する彼をみて、レミが呟く。
そう、思わず口に出して呟いてしまうほどに、その姿は壮絶で、鮮烈で、凄惨だった。
自分の施した敏捷補正上昇の為の宝石細工は無残に砕かれ、籠手と具足は今にも
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