番外編
青騎士伝説 後編
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い続けた敵の顔。半分……自分と同じ、顔面の左半分を覆う仮面状のアイテムをまとった男が、苦々しげにこちらを見つめている。
ああ、ここだ。
ここに、自分の倒すべき存在がある。
自分の強さを見せるべき場所が、ここにある。
あきらめず、槍を構える。男の表情がさらに憎々しげに歪んで、手元へと戻ってきた黄色い刃を振り下ろそうとする。しかし、その前に飛来した白い光がその刃の峰を薙ぎ、その軌道がそらされる。
「今度はこちらですか、ええい、忌々しい!」
ぬかるんだ地面が、強烈な打ち下ろしで大きく抉られる。
その威力は自分の体を大きく揺らすが、相手もそれなりの硬直を課せられている。
やるなら、今。
あの時できなかった、強さを示す機会は、今。
消えかかった意識に、最後の炎が付く。
(『青騎士』は……自分は……負けない……)
ふらついていた体を、残りのありったけの力で踏ん張らせる。構える長槍が宿す、深紅のライトエフェクト。この二カ月、『青騎士』として戦い続けた日々の中で使い続けたソードスキル、《タンラウンド・クルシファイ》。回転磔刑。その光を見た男が、仮面の奥の顔をゆがめる。同時に、下段の三日月が黄色の光を纏って斜めに振り上げる。
槍を握る手に、あらんかぎりの力を込めて。
意識を繋ぐ心に、狂おしいほどの想いを込めて。
(『冒険合奏団』の描いたように……『青騎士は』、負けない……!!!)
赤と黄色、そして青が混ざり合う。
三日月は青い鎧を真っ二つに切り裂き、その下の黒服、そして体を大きく切り裂いた。突き出された槍も相手の腹部を深々と貫いているが、相手の顔は微笑が戻っている。例え初撃を喰らっても、回転が入る前にHPを吹き飛ばせたと思ったのだろう。
だが。
「うぉおおおおっ!!!!!!」
消え行く意識を絶叫でつなぎとめ、槍を持つ手に力を込める。
長槍、《ミスティルテイン》。『青騎士』の主兵装にして、不死のカラクリの切り札であるその『宿木の長槍』の効果は、「与えたダメージ量の五分の一を吸収する」。ぎりぎりのタイミングでの一撃は、「POH」のHPを少なくない量喰らい、それを持ち主の体力としてその命をほんの数ドットだけ繋ぎとめた。
「おおぉおおおっ!!!!」
なおも続く絶叫に、男の顔が死神を見たかの様に恐怖に歪むが、それはもう俺には見えていなかった。ただただ力の限り、その槍を振う。染みついた動作が、自分は出来るという確信が、そして自分のものではない誰かの何らかの力が体を動かして、スキルはフルブーストされ、
「ひ、ぐぁあっ!!!」
男は、高く一回転して地面に深々と張り付けられた。
「く、くそっ!!!」
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