番外編
青騎士伝説 後編
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ましてやこの鉄火場で、とっさの判断で回避をするような局面に遭遇したことなど、一度としてなかった。いつだってソラが、シドが、ファーが守ってくれたから。
「……っ!」
為す統べなく、ただ呆然と、その己の命を奪う光を見つめる、レミの目に。
―――ッ……
小さな青い光が瞬いた。
◆
もう既に、自分にはまともな意識は無かっただろう。
ずっとナイフを使い続けていた敵がなぜ武器を持ちかえたのも、自分にはもう分かっていなかった。突然相手の背中に出現した大きな刃は十分に重量級装備と言えそうな図体で、自分の鎧でもまともに受けると危険だ……と、頭のどこかでは分かっているのに、体にその指令がいかない。
なんでだろう。
槍を構えながら、ぼやけた意識で考える。
(ああ、そうか……)
思い至った。
(『青騎士』は、恐れない……どんなときでも、恐怖しない……)
『冒険合奏団』の残してくれたメモ書きだ。そこに書いてあったからだ。思い至って、少しだけ嬉しくなる。自分はこんなに、意識がとぶほどに追い込まれていても、彼らの描いた『青騎士』としての振る舞いをこなすことができる。
彼らの思いに、応えることができる。
(できるんだ……)
だから、戦える。立てる。
その感情だけで、構えた槍を突き出す。
(ああ……)
だが、感情だけでは、相手との差は埋まらない。
振るった槍はぎりぎりのところを霞めるにとどまり、代わりにその巨大な三日月は容赦なく自分の体へと振り下ろされた。響き渡る破砕音と迸るポリゴン片。自分の体……いや、体を覆う鎧……いいや、第二の自分の体と呼ぶに相応しい、『青騎士』の代名詞ともいえる青の重装金属鎧、《シアン・メイル》が砕けたのだ。
しかし。
(まだ……、まだ、自分は、生きている……)
なんの因果か。ファーのヒットポイントは、まだ残っている。
(生きている……なら……)
恐れずに、立ち向かう。それが、『青騎士』の在り方。
まるで壊れた機械人形のように体を動かす。
「―――ッ……」
朦朧とした意識の中で、右手に付けられた籠手で相手の武器の刃の部分を無造作に掴む。本当なら黄金色の光を纏ったそれを押さえつけたかったけれども、まともに手に力が入らなかったせいで、せっかく掌にうけた刃を捕えられない。明滅する視界の中に煌く青い光は、右の籠手が砕けたのだろう。同時に、金色の光はどこかへと飛んでいく。
「くっ、まだ生きていたのですか! さっさと死になさい!」
声が聞こえる。
霞む視界のなかでそちらを向くと、そこには初めて見る……とうとう間近にとらえた、ここまで闘
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