暁 〜小説投稿サイト〜
鋼殻のレギオス IFの物語
七話
[11/14]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
ろくに動けていないものの、その肩の震えは全員が気付いており、アルシェイラの声に反応して一瞬震えが大きくなる

「泣いてるの?」
「……陛下は、私が本当に要らないのですね」
「はぁ?」

 上げた顔は土に汚れ、流れる続ける涙の跡を鮮明に残している
 震える唇から紡がれた言葉に不意を打たれたアルシェイラが疑問の言葉を返す

「……私は、陛下の影になるため育てられてきました。それなのに、陛下は私を要らないと……」
「ああ……」

 その言葉に頭を抱える
 三王家の亜流であるリヴァネスは王宮警護の任を負うことが多く、それは無論、王自身の影武者まで及ぶ
 早いうちにその才を見込まれ、それ以来女王の影になるためだけに努力を続けた
 その期待に応え若くして十五で天剣にまでなったのに、その剣を与えてくれた女王自身に説明もなしにカナリスは拒まれ続けたのだ
 自分の都合で勝手に拒否した以上、カナリスについての原因はアルシェイラ自身としか言いようがない

「だってねぇ。あなた、全然私に似てないじゃない」
「そんなの、整形でどうにでもできます!」
「……え? 私のこの美貌って整形でどうにか出来るの?」

 涙をまき散らしながらの訴えに驚愕しながら返し、その様に全員が唖然とした表情を浮かべる
 次いで、カナリスが甲高い声で泣きながら細剣を逆手に持って喉に向ける

「あーん、死んでやるー!」
「ええい、やめなさい!」

 本気で突こうとしている細剣を取り上げ、代わりに手で突こうとしたのでその手を掴み暴れるのを抑える
 だだっこのように暴れる天剣授受者相手に手加減の加減がわからず、下手をすれば即座に死のうとするので冷や汗を流していると笑い声が聞こえてきた

「活気があってよろしいですな」
「ティグ爺……ここって笑うとこ?」
「笑う以外に何かありますかな?」
「……カルヴァーンね」

 三王家最後の一つ、ロンスマイア家の当主ティグリスが現れ、その意図を正確にアルシェイラは読み取る 
 火消し役が選んだのが天剣においてデルボネに次ぐ長老であり、アルシェイラの祖父にあたる彼だったということだ

「王というのは絶対的な権力者でありますが、時には下々の者に考えを示していただけなければ、ついていけなかうなってしまいますな」
「だって、影武者とかいらなくない? 暗殺なんかしてだれが得すんのよ? 爺とミンス以外で」

 他都市との交流が希薄である以上、その都市の主を殺しても旨みなど少なく、政治的なものなら最有力候補は三王家となる
 その三王家の亜流から影武者を選ぶなど本末転倒でしかなく、そのため、王宮警護役や影武者は閑職でしかない

「世の中にはそのために育てられ、そうであることを当たり前だと信じているものがいるの
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ