七話
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「クソ……」
小さく呟かれた言葉と同時、手の中にあったグラスが割れる
ここはグレンダン三王家の一つ、ユートノール家の一室にして若き当主である彼、ミンス・ユートノールの寝室
そこにいる彼、ミンスは手に刺さった破片による痛みなど気にもせず、目の前にあるテーブルを今にも投げ出しそうな衝動に駆られながら、何とかこらえ拳を叩きつけるだけに抑える
だが、武芸者であるミンスの耐えられず、勢と技術を凝らした木製のテーブルは、ドン!という共に放射状に罅が入り砕け散る
そんな事など既にミンスの意識には無く、何度となく繰り返した言葉を口にする
「なぜ、私ではない……!」
頭にあるのは、つい先日知ったばかりの事
ある一人の少年を、それも自分よりも若い少年を天剣にしようという動き
聞いた話では女王だけでなく、天剣であるティグリスなども一枚かんでおり、ほぼ内定が確定しかけているという話だ
天剣授受者は十二人までであり、今あいている枠は一つ
その最後の枠は自分の為のものであると疑わなかった
三王家であるアルモニス家は、史上最強と謳われる現女王、アルシェイラを有している。ロンスマイア家は天剣であるティグリスを有している
自然、最後の一人は自分であると信じていたし、民の期待も集まっていた
だが、それが歪められようとしている
「これは謀略だ。……ユートノールが、そこまで憎いか」
逆恨みともとれる言葉だが、なんの根拠もなしの言葉ではない
三王家は初代王の血を守っており、結婚相手が武芸者なのは最低条件。また、三王家間で血が離れ過ぎず、また純化されすぎないように一定期間置きに三王家内で婚姻がなされることとなっている
そして、現女王アルシェイラの相手は自身の兄であったが今はいなく、あろうことか一般女性と駆け落ちしてしまった
順序で言うならば、次はミンスのはずなのだがアルシェイラは次を決めなかった
巷では未だ前の相手への恋心を捨てられないだの、自分を捨てた相手を、ひいてはユートノールの家を恨んでいるとも噂されている
そしてミンスは後者を信じており、根拠はそれだけではない
今回のこの事、他の三王家はそれぞれ関わっているということ
女王とティグリス、つまりユートノールを除く他の三王家はこの事に関わっており、聞いた話では従妹であるクラリーベルまでも関わっているという
それだというのに今まで自分には一切話がなく、偶然知ることがなければ今でもミンスは知っていなかった
今現在ユートノール家は自分一人。父は戦死し、母は後を追うように病死した
父の兄弟ならばいる。だが、三王家法では継承順位は低く、もし現当主である自分が死ぬようなことが
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