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王道を走れば:幻想にて
第四章、その8の3:二つの戦い
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れをまっすぐに腰に構えた。故郷を背にした彼らの顔には隠しがたい怯えもあったがそれ以上に護国の闘志も漲っていて、槍の矛先はぶれる事がなかった。 
 けたたましく土を蹴り付けながら、賊の一番槍がエルフの陣形へと飛び込んだ。その剣がエルフの鎧に弾かれるとほぼ同時に、後続が雪崩のように続いていった。途端に戦場が混沌と化す。やや横広がりの円陣を組みながらエルフ達は情け無用とばかりに槍を突き出し、賊らは蹂躙という一字のみを体現せんと獰猛な刃を奮い立てる。槍が長い分盗賊の勢いを削げたが、しかし数の暴力には逆らえないだろう。時間が過ぎる度に追い詰められるような感覚に陥る。

「陣形を崩すなぁ!ゆっくりと後退しろっ!!!」

 隊長格のエルフの、裏返りかけた声が響いた。パックは自慢の槍術を使って既に四人を斬り伏せていた。普段の狩りで硬い獣の躰を貫くためなのか、エルフの刃はとても鋭い。その御蔭で軽く手先を捌いただけなのに賊の手足を容易く切裂く事が出来た。しかし倒れてしまった男を踏み潰すような勢いで更に賊が湧いてくるのだから、息を吐く暇がなかった。
 時折、陣形の横でも交戦の叫びが聞こえる。老人や子供までもが総動員されて戦っているのだ。兵士が護衛についているだろうがそう長くは持たないだろう。パックが11人目の敵に刃を突き立てた時、槍をひしと抱かれてしまい、そのまま奪われてしまった。得物を失った彼は慌てる事無く後ろへと抜けていき、木々の背後に隠してある武器を取りに行こうとする。
 近場にあった槍を手にした時、不意に、びゅぅと風が吹き抜けていった。北西からの強い風であった。

「っ、風が・・・」

 パックはそう呟き、はっと気づいた。この風、この場所。そして足元に薄らと敷かれてある火種と、ぼぉと燃える松明を持つ兵士達。そうだ、ここは火計を行うための一線なのだ。
 既に兵士等は作戦予定地点まで後退しつつあった。そして何より、この風を逃す事は出来ない。パックは傍の木に登っていたパウリナに鋭く目を遣った。

「パウリナっ、やれ!!」「っ!火を放てっ!」「全員、散開しろぉっ!!」

 それぞれの命令が交錯し合い、兵士等が急ぎ退避していく。そして更に投げ込まれる火種を巻き込むような勢いで、地面に炎が燈されて、それはすぐに紅の壁となって広がっていく。突如としてエルフの背後を飾った赤い壁に賊らは瞠目する。そして直後に、風によって煽られた炎や火の粉が、自分達に覆い被さって来るのに気付いた。
 初めこそは被害は大した事では無かった。衣服を叩けばすぐに小火は消えてしまうし、少し身を引けば難なく炎は避けれた。しかし火種が撒かれているせいで地面に炎が早く伝わっていき、更には初冬の乾いた空気のためか樹木や枯れ葉などが予想以上に燃えていく。結果、あっという間に火の絨毯が賊達の足
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