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王道を走れば:幻想にて
第四章、その8の3:二つの戦い
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が空を舞った。盗賊等はそれを予期していたのか、斜め上から飛来するそれを受けるように大きな盾を担いだ。一部脆いものは砕けて矢が貫き、また盾の間に矢が飛び込むも、大半が盾に突き刺さったせいで打撃を与えられず、全体としては極々僅かな損害しか与えられなかった。
 第二射を準備する間に盗賊等は動きをのろのろと止めて、弓矢を構えてひうと放って来た。量だけで見てもやはり此方の二倍はあろうかという黒い線と線。木陰に隠れか盾を掲げてそれを防ぎ、弓兵らは反撃の矢を放つ。戦いは互いを牽制し合う矢の合戦によって幕を上げた。

「撃ち合いか」「イル様。此方の方が数質共に劣ります。消耗戦になる前に、事を決せねばなりません」

 出陣を強硬に説得していた隊長格の男が言う。イル=フードは飛び交う高調子の数々に目を細めながら返す。

「分かっておる。しかし、どうしたものか。あの娘の言う通りに森へ誘うか?」「それこそ愚の骨頂。我等の家々を焼かれる事となりますぞ」
「そうか・・・」「・・・イル様、弓を射掛けるばかりで歩兵は止まったまま。これはすなわち、心中では我等の迎撃を畏れているに違いありません。どうか私に采配をお預け下さい!私の指揮があれば必ずや、賊共を撃退して御覧に入れます!」
「・・・なるほど。膠着状態に陥れば我等が負ける一方であるな。よし、ならばお前にーーー」

 采配を預ける、と言わんとした時に枯れ木の間を縫って賊の矢が飛び込み、期待の目をしていた隊長格の男の腹に突き刺さる。内臓器官まで傷ついてしまったのか男は大層苦しげに顔を歪めて跪き、兵等に抱えられて後方へ下げられていく。 
 どうしようもないなとイル=フードが顔を横に振った時、盗賊の方から一際大きな雄叫びが響いた。ずしずしと地を揺るがすその様は、静に留まるを知らぬ、進撃の様相であった。

「敵が動きました!こちらに突っ込んできます!」
「・・・どうしようもないな。ユミル」
「なんでしょうか」「あの娘の策を採る。一斉斉射した後、兵を後退させよ」
「!宜しいので?」「構わん」
「承知しました。弓兵!最後の一度斉射した後、一気に後退せよ!!入れ違いに歩兵は前進!敵と交戦した後、徐々に後退せよ!!」

 命の危機が迫っているのだ、毛嫌いする人間の指示にエルフらは従順に従っていく。ユミルは傍に控えるパックにと視線を移した。これより死中へと赴く戦士に、ユミルは最大限の激励を言う。

「戦場を頼むぞ、パック」「任せておけ。お前はお前の任務を遂行しろ」

 最後の弓の斉射が始まると同時に、ユミルは一気に森の中へと戻っていく。それらを受けると同時に盗賊等は重たい盾を捨てて、凄絶な叫びを出しながら武器を構える。殺到してくる賊らを迎え撃つためにエルフの歩兵らが槍を持ちながら行進し、弓兵と入れ違いざまにそ
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