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王道を走れば:幻想にて
第四章、その8の3:二つの戦い
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するも、すぐに怒りを甦らせて怒鳴り付ける。

「お、おい!何をやっている!戻れ!戻ってこい!

 答える者は誰もいない。過ぎ行く者の肩を掴まんとするもすぐに振り払われて、男はだらしなくたたらを踏んでしまう。顔を歪めて更に叫んだ。

「助けろよ!?なんで、俺を見捨てるんだ、おい!!」

 炎に焦がされる木の香りが男の背後より漂ってきた。同時に、森から段々とエルフ達が現れてくる。老若の差にばらつきがある集まりであったが、故郷を守るという一点において団結されており、卑しき者達を斬り伏せながら徐々に戦線を押し上げているのだ。
 そして男は、赤々とした模様となっていく森の西方より来る一団の全貌を見て、次いでエルフが零した言葉を聞いて、状況が一転したのを理解した。

『見ろっ!!西から味方が来るぞ!!』『討伐隊だ!!あいつら、帰ってきたんだ!!』
「はっ・・・なんだよそれ・・・こんな出来過ぎな話、あってたまるかよ・・・」

 燃え盛る森を背景に、数を互角程度までのし上げたエルフらの足音が、交わされる剣戟の叫びがどんどんと近づいてくる。理不尽な現実に男は忸怩たる思いを抱き、肩を震わせた。

「いいじゃねぇか。ガキ一人殺した程度なんだぜ?村の産婆だってそれくらいやるだろ?それがなんで俺だけ、こんな酷い目に遭わなくちゃいけねぇんだよ・・・」

 口から毀れる陰惨な人生の始まりは誰の耳にも届かず、誰かの断末魔のせいでかき消されてしまった。何時の間にか残る味方は僅かとなっている。多くの仲間は大火と救援という壁を前にして背を向けて遠くへ走り、残るはまだ意気軒昂な者達か、怪我で逃げる事が出来なかった者、そして口のきけぬ死体だけであった。
 目前の戦線から一人のエルフが抜け出して、男の下へと走ってくる。勝利の確信のために、その若々しい顔には力強い笑みが浮かんでいた。

「っしゃあぁっ!俺のーーー」「ああああああっっ!!!!」

 指揮官の男は今生最大であろう猛々しい叫びを伴って、突き出された槍を避けて脇に抱えた。そして相手の顔を何度も殴りつけて槍を奪うと、くるりと回して矛先を相手の首に突き立てる。もんどりうってエルフは倒れる。血に濡れた槍を振り回して男は高々と吼えた。

「かかってこいよっ!!人間が嫌いなんだろ!?だったらさっさと殺しにこいよ、蛮族共!!」

 自らの進退を見極める事を放棄し、男は血戦の中へと赴いた。前面にはだかる者が全て敵という分かりやすい構図に男の自暴自棄な闘志は更に掻き立てられる。その勇壮なる武勇ぶりは、彼が王国の兵士であったならまず間違いなく勲功第一として賞賛されるほどであったが、不幸にも敵は公に仕える者であった。
 突き出され振り抜かれる刃によって男の身体には深浅問わず傷が出来ていく。だがそれ以上に、益荒
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