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王道を走れば:幻想にて
第四章、その8の3:二つの戦い
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もとに広げられていったのだ。
 毛深い肌を焦がすそれに賊の間からは忽ち悲鳴が漏れだした。炎の効果は凄まじく、士気が挫かれるのが見受けられる。

「今こそ好機!!一気に押し戻せっ!!」

 猛火の助けを受けながらエルフは反撃を開始する。火が移った枝を賊らへと蹴飛ばし、炎が移らないと見た場所より槍を突き出し、弓を引いて矢を飛ばす。少なからず火によって身を巻かれる仲間もいるというのに、エルフはそれらを無視するかのように戦っていく。最後尾の盗賊等は迫り来る炎に気圧されたか左右へと展開してエルフと交戦するが、逃げ場の少ない者達は一気に反転して真後ろへと引き返していく。

「くそっ、こんな事になるなんて・・・!」

 盗賊の指揮官の男は戦場で負った右肩の傷を庇いながら、道端の目立たぬ場所に転がっていた藁を蹴り付けながら走る。おそらくあれも火種の一つだろう。此方の攻撃までによくこれだけの火種を用意出来たものである。しかし今は下手な関心を寄せている場合で放った。その気になれば他にも火種を見つけられるだろうが、それをするほどの猶予があるとも考え難かった。指揮官の男は必死に森の入口まで後退していった。 
 続々と生き残った仲間等が合流してくる。無傷の者が多いのは火を刃を交える事無く撤退したためか。火によって木の幹が割れる音が響いてくる。それに混じって不意に、地面を勢いよく、そして間断なく蹴り付ける音を聞いた。まるで風のような速さでそれは男らに迫っていく。騎馬で迫るエルフの手勢であった。森の中を大きく迂回して、横合いより指揮官を直接狙いに来たのだ。

「うおおおぉぉっ!!」

 戦闘を走るユミルの一刀が、一人の男の頭をかち割った。続いていく六つの騎馬もそれぞれの刃で赤い鮮血を散らした。  

「どうだ!?やったか!?」「全員やりました!」「よし、そのまま森に退け!!」

 七つの戦果を挙げた者達は一撃離脱の心得の通り、すぐさま森の中へと入らんとする。咄嗟に地に伏せて凶刃をやり過ごした指揮官の男は、顔を痛みと憤怒によって赤らめて叫ぶ。 

「くそったれ・・・やってくれやがって!!」「おい、大丈夫か!?」「あいつらを撃て!!てめぇらの弓はただの杖か何かか!?さっさとその出来物だらけの口塞いで、ぶっ殺せぇっ!!」

 口汚く罵る仲間に辟易しながらも弓を持った仲間等が騎馬に向かって矢を放つ。最後尾を走っていたとろい二頭だけを落馬せしめたが他は逃してしまった。その不出来な戦果に指揮官の男は更に怒りを募らせる。
 やがて更に盗賊らが森から現れてくる。黒煙を立ち上らせて紅蓮の火に包まれていく森から逃げようとする者達だ。合流した以上戦況の回復も見込めるだろうと、指揮官の男は喜びながら立ち上がり、その横を賊らがむざむざと過ぎ去っていった。男は一瞬茫然と
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