ターン23 吸血美女と5000年の負の歴史
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何か言おうとするけど、上手く言葉が出てこない。必死になって喋ろうとする僕の唇に黙っていて、と言うかのように人差し指を当てて、ゆっくりと顔をあげてカミューラと目を合わせる。
「ねえそこの年増。これ以上清明に無茶させないで、だってさ」
「あくまでも年増呼ばわりかしら?確かに私も、その子はあんまり好みじゃないから別に魂をもらったって持って帰ろうとは思わないわ。でも私だって鍵は欲しいし、第一誇り高きヴァンパイアの末裔として一度狙った獲物を無条件で逃がすわけにはいかないのよ」
「なら、私の鍵ぐらい持って行って構わないから。だから今すぐ清明とのデュエルを中止して、だって」
「……っ!?む、そう」
慌てて起き上がろうとするけど、まだ体中から吹き出ている紫のオーラのせいで動くこともままならない。このっ、このっ!
「へぇ………ご立派なことね。そうね、鍵がもらえるなら確かに悪い話じゃあないわね。ただし、もう二つ注文があるわ」
「なに?なんだって」
とても邪悪な笑みを浮かべながら、カミューラは一言一言強調するように言葉を発した。
「まず一つ目に、その坊やを放す代わり鍵二つ。あなたの分だけじゃなくて、その坊やの鍵もよこしなさい」
「そんな程度なら……構わない、だってさ。はい、まず私の分」
そう言って首にかけていた七星門の鍵を、ヒュッと投げつける。それをカミューラが片手でキャッチすると、その鍵が光になって消えていった。ここまではまだいい。だけど次のセリフをきいた瞬間、心臓が止まりそうになるほどの衝撃を受けた。
「はい、よくできました。それじゃあ、ふたつ目の条件ね。坊やの鍵、それにあなたの魂も一緒に付けるって言うなら考えてあげてもよくってよ?私は坊やの魂をあきらめる。だからあなたの魂を代わりに貰っていく。合理的じゃなくって?」
「ふざ、けん、な……」
「わかった。だって」
動かない体で何とか思いとどまらせようとするけど、彼女はそっと僕の体を地面に横たえ、僕の首から七星門の鍵を取るとそれを持ったままカミューラと向かい合う。何とか、少しでも体が動きさえすれば!
『落ち着きなさい。私の持つ負の力は、100年も生きていない人間が力づくで押さえつけられるようなものではない。力と正面からぶつかりあうのではなく、うまくコントロールするのだ。そして貴方にはそれをする素質と能力がある』
そうこうしている間にも夢想はゆっくりとカミューラの方に一歩一歩近づいていき、その分僕との距離も離れていく。その距離がなんだか、二度と埋められないような気がして。………そんなの絶対に嫌だ。そう思った瞬間体が急に楽になって、ほぼ無意識のうちに口が動いていた。
「待ちな、お二人さん。夢想、僕なんかのためにそこまでしてくれてありがとう。
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