第八章 望郷の小夜曲
第七話 捜索隊
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中からやって来た物売りや名前が書かれた木製の看板を持った者が立ち並んでいる。そして物売りから物を買う者、売る者、そして看板を持った人に話しかける人たちによりすし詰め状態であった。
歩くだけで肩がぶつかり合うそんな所で立ち止まり言い争っている四人に、じろじろと迷惑そうな視線が向けられているが、四人の中にそれを気にする程繊細な心の持ち主は一人もいない。
様々な視線を向けられながら、それを気にすることなく肩を竦め苦笑するキュルケに、ルイズは片手をひらひらと動かしてみせた。
「一応わたしが渡された命令書には『ロサイス北東から五十リーグ離れた丘で、敵を足止めせよ』って書かれていたけど、手がかりと言えばそれぐらいね」
「ふ〜ん……それだけかい?」
「ま、何もないよりかはましか」
ロングビルは他にないのかと視線で問いかけてくるが、顔を振ってルイズはそれを否定する。
「そうかい。ま、そりゃしょうがないか」
未だ戦火の跡が色濃く残っているのだ。たった一人の人間の情報がそう簡単に手に入る筈がない。
例えそれが七万の軍を一人で破った男のものであっても。
「まずはそこに行ってみるしかないわね。で、どうする?」
「どうするって決まってるじゃない。さっさと行くわよ」
キュルケが三人を見回すと、ルイズが背中の荷物を抱え直し、歩きだそうとしたが、
「待ちな」
「ぐえっ」
背中の荷物をロングビルががしりと掴んだことにより止められてしまった。突然荷物を掴まれ意思に反して急停止されたことにより、肩掛けが喉に引っかかり首が締まってしまい、ルイズが蛙が絞め殺されたようなくぐもった声を上げる。
「ゲホッゲホ、ケホ、な、何すんのよッ!」
「もう少し落ち着け。周りを見てみな、この様子じゃ馬も借りれないだろ。歩きでも行ける距離だけど、着く頃には日が暮れちまうだろうし、何より―――」
「何よ」
喉を抑え、涙で滲む目で睨んでくるルイズの足を指差すロングビル。
「そんな足で歩けるわけないだろ」
「うっ」
「シエスタは大丈夫だろうけど、あんたたちは無理だろうね」
ロングビルが指差す先のルイズの足は、生まれたての子鹿のようにぷるぷると震えていた。ロングビルはルイズの足と、その隣に立つシャンっと立つシエスタの足を見比べると肩を竦めてみせる。
「あなたたち?」
ロングビルのセリフに違和感を覚えたルイズが、下から覗き込むように見ていた顔を傾げると、ロングビルは親指を立て隣りに立つキュルケを指差す。
「そこのお嬢さまも限界が近いようだしね」
「キュルケ」
「あによ」
「……まだまだね」
「あんたに言われたくないわよっ!」
「まあまあ落ち着いてください。今日はずっと船の中で立
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