第八章 望郷の小夜曲
第七話 捜索隊
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ジや竜が倒されていく。剣士が活躍する度に、シエスタは手を叩き歓声を上げる。
アルヴィーを見慣れたルイズやキュルケも、普通よりも滑らかに動くアルヴィーによる劇に何時の間にか見入っていた。
それを見つめる視線が二つ。
アルヴィーによる演劇の向こう、指揮者のように立つフードを深く被った女性がいた。顔を俯かせている顔は見えないが、フードから長い黒髪が溢れている。女性は顔を俯かせているが、視線はアルヴィーの向こう、人形劇を見下ろすルイズを見つめていた。そしてその後ろに、まるで影のように立つ男の姿があった。女と同じようにフードを深く被っているため顔は見えない。しかし、フードの外からでも分かる程、その身体は鍛え抜かれているのが分かった。深く被ったフードの奥で光る暗い眼光は、笑うルイズの顔を凝視している。突き刺さるほど鋭く強い視線でありながら、意志は全く感じられない。それは奇妙な視線だった。
一際大きな竜が倒され大きな歓声が観客から響くと、小さな剣士のアルヴィーはぺこりと観客へ向け頭を下げた。倒された兵士や騎士、メイジや竜も立ち上がると観客の前で頭を下げる。観客は笑いながらコインを投げ去っていく。ルイズたちも同じようにコインを投げると、テントに戻ろうと踵を返そうとした時、
「あれ?」
ルイズの足に何かがコツンとぶつかった。訝しげな顔を浮かべ下を見ると、そこには人形劇の主役である剣士が転がっていた。
「なんでこんなところに?」
膝を曲げ、シエスタが手を伸ばす。
「ダメっ」
「え? いたっ」
キュルケが制止の声を上げたが間に合わず、アルヴィーに伸ばしたシエスタの指先をいきなり動き出した剣士の人形が持っていた剣が切り裂いた。
血が流れる指先を口に含み、シエスタが涙目で横に視線を向けると、呆れたような顔を浮かべたキュルケと目があった。キュルケはスカートの中からハンカチを取り出すと、シエスタの手を取り傷口を塞いだ。
「持っている剣は本物だから気を付けないと」
「すみません」
顔を俯かせ謝るシエスタ。キュルケはシエスタの指先を結び終えると、背中を向け歩き出した。
「はい終わり。もう遅いしさっさと寝ましょ」
「そ、その、あ、ありがとうございます、ミス・ツェルプストー」
「いいわよこのくらい」
「シエスタ大丈夫?」
「大丈夫です。これくらいの傷、田舎ではしょっちゅうでしたから」
劇を見る前と全く違い、仲良く笑いながらルイズたちはテントへと向かう。
小さくなっていくルイズたちの後ろ姿を見つめながら、フードを被った女性が落ちている剣士の人形を持ち上げた。くるりと回り、ルイズたちに背を向けた女は、未だ立ち尽くしたままのフードを被った男に向かって歩き
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