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ドン=ジョヴァンニ
第一幕その二十一
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第一幕その二十一

「丁重なおもてなしを有り難うございます」
「この様な宴に」
「それではです」
 ここで言うジョヴァンニだった。
「また音楽を。そしてレポレロ」
「はい」
「御前は踊りの相手を組ませるのだ」
「わかりました。それじゃあ」
 こうして舞踏がはじまる。曲はメヌエットだった。
 そのメヌエットがはじまる中でレポレロは皆に対して言うのだった。
「さあさあ皆さん」
「はい」
「踊りですね」
「そうです。踊りましょう」
 笑顔で皆に告げる。
「皆で踊りましょう」
「よし、それなら」
「皆で」 
 村人達も召使達もそれに入る。こうして皆で踊りはじめた。
 そんな中でエルヴィーラはツェルリーナを見つけてアンナに告げた。
「あの娘がですね」
「悪党に言い寄られていた」
「そうです。ツェルリーナちゃんです」
 年下なのでちゃん付けであった。
「いい娘なのですが」
「何という男なのでしょう」
 部屋の中心に戻ったジョヴァンニを忌々しい目で見ての言葉だ。
「我慢できないわ」
「今は耐えるんだ」
 オッターヴィオは怒りを爆発させようとする彼女に優しく告げる。
「今は。いいね」
「ええ。何とか」
「ははは、さらに楽しくなってきたな」
 ジョヴァンニは部屋の真ん中で上機嫌なままだった。
「さて、レポレロよ」
「はい」
 そしてまたレポレロに声をかけるのだった。彼もそれに応える。
「わかっているな」
「勿論ですよ」
「そろそろカタログの名簿を増やしにかかる」
 彼のライフワークにかかるというのだ。
「その最初はやはり」
「あの娘ですね」
「そうだ。ツェルリーナだ」
 彼女をちらりと見たうえでの言葉だった。
「あの娘からだ」
「わかりました。それじゃあ」
 彼は頷いてからマゼットのところに行きあれやこれやと言ってツェルリーナから離す。彼はかなり不穏な顔だったがレポレロは酒に御馳走まで出して離す。その間にジョヴァンニはツェルリーナに再び寄るのであった。
 そうしてそのうえで。彼女を誘う。
「ではツェルリーナ」
「はい」
 彼女は今は心の中の警戒を隠していた。
「今から」
「ええ」
「あの娘に」 
 アンナはオッターヴィオと踊りながら怒った声を出していた。
「いよいよその毒牙を」
「だから今は」
「落ち着いて下さい」
 オッターヴィオだけでなくエルヴィーラも彼女に声をかけて宥める。
「騒いだら駄目だよ」
「今が肝心ですよ」
「え、ええ」
 二人に言われて何とか怒りを収めるアンナだった。その間にジョヴァンニは何気なくツェルリーナをそっと部屋から出す。三人はそれを見て言い合った。
「いよいよですね」
「そうですね」
「今です」
「よし、今だ」
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