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ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
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〜妖精郷と魔法の歌劇〜
橋の上の会敵
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することができた。
───あの頃のテオドラねーちゃんは、もういないのか…………。
胸中でそっと呟き、ほんの少し悲しい気分になったレンはそれを振り払うように、三撃目を突き出した。
すると────
「…………………………ッ!!」
突き出した左手が、まるで見えないゼリーにでもぶつかったかのような衝撃を伝えてきた。これは、あの世界で何度も経験したことのある感触。
しまった、と思う間もなくレンの小柄な身体がふわっと地面から離れ、吹き飛ばされていた。
数回バウンドし、意思でできた橋の欄干に音高く衝突する。
心意での攻撃ではなかったので痛みはなかったが、背中一杯に不快な衝撃が大いに走り、呻き声が口から漏れ出る。
一瞬ぼやけた視界の向こう側で、猛然とこちらに向かってくる人影が見えた。
テオドラは欄干を砕き、なかば埋もれているようなレンに向かって目一杯に振りかぶった拳を振りぬいた。自分よりも小柄で、小さな生き物に向かっての容赦は一切なかった。
気を抜いたら、殺されると分かっているから。
だが、テオドラの拳が捉えたのは生身の身体を殴る手応えではなく、果てしなく硬質なものをぶっ叩いたかのような凄まじい痛みだった。
「ぐぅっ………!?」
思わず細めていた目をこじ開けると、拳が殴っていたのは、先刻までレンが寝ていた欄干だった。力一杯振りぬいたせいか、テオドラの拳は肘辺りまで欄干に埋没している。
肝心の紅衣の少年の姿はどこにもない。
「どこに………ッ!!!」
きょろきょろと視線を動かすテオドラ。その首元に────
すっ、と音もなく手刀があてがわれた。
「────────ッッッッ!!!!!」
最大級の驚きで固まってしまったテオドラの耳に、静かで幼い、聞きなれた声が響く。
「無理だよ、テオドラねーちゃん。ねーちゃんにはあの世界から帰って来てから今まで、二ヶ月のブランクがある。その間、僕がただ何もせずにこの世界で遊んでいたとか、本当に思ってるの?」
背筋がゾクリとするほどの《ナニカ》を含んでいる声。その声は明確に物語っていた。
二ヶ月と言う、あまりにも長い時間の重さを。
その間にレンがしてきた死闘と修行の数々を。
だからテオドラも、極めて冷静に返した。
「…………さすがだな、レン。久しぶりに痛感したよ。お前の《
地走
(
じばし
)
り》」
《地走り》
それは、レンがSAO時代の時に編み出した、システム外スキルである。その特徴は、無音高速移動歩法。
ある一定のリズムを高速で踏むことによって、システムに負荷をかけ、移動の際にかかる音をキャンセルすることができると言うものだ。ちなみに、これを身に付けた者は今のところ、レンただ一人。
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