暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
ALO
〜妖精郷と魔法の歌劇〜
橋の上の会敵
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酸に触れたように白煙を上げて溶けた。テオドラは構える。右腕を前に、左腕を軽く後ろに引いてファイティングポーズを取る。

白煙の向こうからゆっくり現れる小柄な人影。

レンは、キリトやリーファ達と会ってから初めて臨戦態勢を取った。と言っても、両手を力なくだらりと垂らしただけだ。

しかし、テオドラは知っている。それを取ると言うことは、レンが本気で戦うと言うことなのだと。

自然体という名の、あらゆる体術の中で奥義とされてきた構え。相手の一挙一動を一部の隙もなく先読みし、最適な動きを実現できる構え。

殺気という名の情報圧が堰を切ったように溢れ出し、空間を歪めていく。びし、びし、とあちこちで瓦礫にヒビが入る音が聞こえる。

「へっ!やっと本気出しやがったか!」

テオドラがニヤリと、好戦的に、獰猛に笑う。

「あぁ、分かってたさ。お前がこれくらいで止まらないくらいはな。だから────」

両の手の指を軽く握り、また開いた。そしてテオドラは────

「あたしが止めに来たんだよッ!!」

天高く吼えた。










最初に動いたのは、テオドラだった。

刃のごとき鋭さを持つ手刀を槍のように真正面に立て、無言で猛烈な突進を敢行する。一般プレイヤーが見たら、とてもじゃないが眼で追いきれないほどのスピードだ。が────

「遅い」

ぶつり、と雑音(ノイズ)の混じった声で呟いたレンはふらりと、倒れこむように一歩前に踏み出した。

そう、テオドラが突っ込んでくる方向に。

「なにっ!!?」

予想外の展開に一瞬躊躇してしまったテオドラは、咄嗟に手刀の威力が解き放たれるべき方向を変えることができなかった。

手刀の脇を通り抜けるように、自然にレンは避ける。

同時に、限界まで引き絞っていた右足の膝をねじ込むように、自分より数倍も高いテオドラの急所(みぞおち)に叩き込む。

「っつ、ぐうぅぅっ……!」

さらにしゃがみ込み、マシンガンのごとき連続突き技を出してくるレン。テオドラが体勢を戻す前に、一気に勝負を付ける気なのだろう。

レンは、テオドラを見くびりもしなければ油断もしない。本気を出すに充分な相手だからだ。

だから、全力で。

本気を出す。

一撃目、二撃目は回避(イベイド)された。さすがは零距離戦のスペシャリスト。まるで水を掴むがごとき滑らかさだ。

だが、どれだけ足掻こうが、隙というものは必然的に生まれてしまう。

今はなきSAO時代のテオドラならば、自らの隙をカバーしようとし、どんな手を使ってでも塞いできた。

しかし、ここはあの世界ではない。テオドラの動きはあの頃のキレはなく、レンの目にはテオドラの一挙一動をはっきり目視
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