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ドン=ジョヴァンニ
第一幕その十六
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の頃少し遠くにジョヴァンニの屋敷が見える庭先で。ツェルリーナがマゼットに必死に言っていた。
 ジョヴァンニの屋敷はさながら宮殿のようである。大きく立派でかつ豪奢である。彼の豊かさを示すだけでなくその家柄さえ示しているようだった。
 だが今はそれは背景でしかなく。ツェルリーナは必死にマゼットに言い続けていた。
「だから聞いてよ」
「聞くものか」
 マゼットは必死に声をかけるツェルリーナに背を向けていた。
「誰が聞くものか」
「それはどうしてなの?」
「自分の胸に聞いてみたらいいだろ?」
 ツェルリーナに背を向けたまま言う。

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