Epilogue(全文)
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も同じだった。けれど彼に同情することはできない。
どうして俺に構う?――ナツメはそう言おうとして口を開いたが、叫ぶようなコウメの声がそれをかき消した。
「ナツメとユーリはおともだちなの?」
口を開けたまま唖然としてしまったのは、ナツメではなくユーリだった。ナツメは表情一つ動かさず、その黒の瞳の奥で煙のような感情を燻らせる。ユーリが大きく頷いて見せた。
「そうだよ。お友達」
「違う」
呆れた口調で彼は否定した。そこに強い感情は感じられなかった。照れ隠しのようでもあったが、実際はそうではなかった。
「ひどいな」
ユーリが腰を落ち着け、天を仰ぐようにしてナツメを見上げる。しかし神に祈るような思いはなく瞳は抗議した。
事実だ、とナツメも腰を下ろす。雨漏りしている場所を避けて三人座り込むには六畳の間は狭かった。それでもナツメは銃を邪魔にならないよう寄せるだけで、それを置こうとしない。両親に何かを言われたのか、コウメは銃に興味を示さなかった。あるいは、なんの道具なのか知らないのかもしれなかった。
ランプは焚火のように音を立てない。囲炉裏のように鍋を置くわけでもない。しかし自然と三人はそれを取り囲むように座った。しばらくは誰も何も言わなかった。風や吐息によって微かに揺れる火に見入った。家族のように。しかしナツメはそう感じなかった。彼が自分の家族というものをほとんど憶えていないせいで。
「ナツメはここに住んでるの?」
コウメは自分が眠りそうになっていることに気づいて、会話をしようと思い立った。眠ってしまうことは許されない。彼女にとってその場はそれほど有意義だった。家族以外の誰かと話せるという場が。
「そうだ」
「狭くない?」
「寝るだけの場所だ、狭くはない」
コウメはふーん、と気の抜ける声を出す。それを聞いて、ナツメにも彼女を睡魔が襲っていることに気づいた。
それにつられたのか、ユーリが大きく欠伸を漏らす。
「ナツメ、いつまでこのポリスにいるつもり?」
「予定はない」
「じゃあ永住するかも?」
「否定はしないが」
ユーリもコウメの真似をしてふーん、と言って見せる。
「永住すればいいじゃん。いいとこだろ、ここ」
「そうだな」
他のどのポリスよりも平和で居心地がいい――それはナツメも認めるところだった。しかし同様に彼は思う。それ故に、他のどのポリスよりも危険だと。
その思考が顔に出たのか、ユーリが鋭く察した。
「もしかして、平和ボケしてるとか思ってるか?」
「そうかもしれない」
「平和で何がいけない? どんなにピリピリ備えたって、死ぬときは死ぬんだ」
ユーリが不機嫌そうに眉をひそめるのをコウメは黙って見ていた。眠気でほとんど頭の回っていない彼女には彼が何を言っているのかわからなかった。どうして
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