第十六章 破滅
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した空であり、心とも意識とも呼ばれる魂そのものである。それが絡み合い縁を形成しながら集合的無意識を構成する。
現代物理学によれば、宇宙は四つの力によって支配されていると言う。ケーシーの「物質界に現されている宇宙緒力の創造エネルギーと一つになる」という言葉は、この四つの宇宙諸力の創造エネルギーの源である空、すなわち神の元に帰るという意味となる。その時、個としての波動は止み、空と一体となるのである。
ふと、石井は苦笑いを漏らした。自分の勘違に気付いたからだ。実は、集合的無意識は仮の宿にしか過ぎず、人類が真に帰るべき『母なる海』とはこの「空」であったのだ。物質化した空、つまり堕ちた天使が、物質から開放され、天(空)に帰るには純な魂となって昇華するしかない。『母なる海』はそれを心待ちにしている。
黙想する石井の顔に満足げな笑みが浮かぶ。その時、片桐が再び大きな声を響かせた。
「さあ、ビルに着陸する。降りる用意をしろ。キャビンのドアのロックを外せ。おいおい、ポリ公がうようよいやがる。まさに大捜査線だな。」
高らかに笑っている。ヘリが屋上へ下りてゆく。警官が着陸地点を取り巻くように集まってきた。
ヘリが警官達が作る輪の中心に着地した。エンジンが切られた。ロータはその回転速度を急速におとしてゆく。警官達が近寄ってくる。
片桐が始めて振り返り微笑みかけた。
「これも何かの縁だな。」
「ええ、私もそう思います。きっと前世でも会っていると思います」
片桐の視線が揺れた。そして僅かに頷くと、微笑んだ。石井も片桐を見詰めたまま笑顔を返した。
石井は立ち上がり、
「それじゃあ、先に下ります。」
と言うと、五十嵐の手をとりキャビンのドアを開けた。
田村警部が前の窓ガラスをドンドンと叩いた。前のドアはロックされたままだ。片桐が待っていろとばかり、田村に手をふる。そして足元に置いてあるアタッシュケースを開けると、拳銃のカートリッジを取り出して装着した。
それに気付きもせず、田村警部がまたドンドンと叩く。石井と五十嵐が降り立つと、後部座席に入れ替わるように小林刑事が入っていった。
五十嵐の肩を抱き、歩き出した直後、田村警部の悲鳴のような声、続きバンという銃声が響きわたった。驚いて二人で振り向く。しばらくして小林刑事が顔を血だらけにしてキャビンから降りてきた。その足取りは覚束ない。
一瞬、胸が凍るような感覚に襲われた。田村警部が恐怖に顔を引き攣らせ後退りする。その時、小林と同年輩の初老の刑事が近寄り、その体を支えようとした。小林刑事はその手を振り払い、尻のポケットからハンカチを取り出し、血だらけの目の辺りを拭った。そして言った。
「野郎、死ぬのは勝手だが、人様の迷惑も少しは考えろってえの。血を浴びせやがって、何も見えやしねえ。それに
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