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予言なんてクソクラエ
第十二章 連続暴行魔
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    (一)
 石井は再びタクシーを拾い四谷に向かった。山口のことが気になった。石井は見張られていた。となると石井を名指しで指名してきた相沢という依頼者がますます怪しく感じられたのだ。万が一のことを思うと心が急いた。
タクシーの中で五十嵐に電話を入れたが留守電になっている。兎に角、全ては事務所に帰ってからだ。本来であれば千葉県警に保科香子のことを知らせなければならないのだが、何故かそうする気が起きない。教祖に対する闘志が心に渦巻いているのに何処から手をつけてよいのか分からない。苛立ちが体中を駆け巡る。
 二階の事務所に駆け上がりドアを開けた。佐々木が応接のソファの背もたれ越しに振り返った。その唇に煎餅の欠片がはさまっている。急なご帰還に驚いて目をまん丸に見開いたが、すぐさまテレビの画面を消し、前かがみになり、もごもごと声を掛けてきた。
「随分早かったじゃないですか。急用が出来たっていうからてっきり帰りは午後になると思っていたわ。」
石井が自分の席につくと、佐々木も資料を抱えて事務机に戻った。普段一人の時は、そこが定位置らしい。石井が伸び上がり応接のテーブルを見ると下の棚に菓子入れがそっと隠されている。それを見る石井をものともせず、佐々木が声をかけてきた。
「やっぱり何かが起こるわね。」
「何かって?」
「大きな地震だと思う。ここ二三日妙に胸騒ぎがするの。勿論、真治さんから話を聞いたことで心理的に不安になったということもあるけど。でも、犬の遠吠えもここのところ激しくなっているわ。」
「犬の遠吠え?ちっとも気が付かないけど。」
「真治さんのように何の屈託のない人はバタンキュウで寝入ってしまうんでしょう。私なんか独り者で不安な夜を一人過ごしているの。眠れない夜もあるのよ。」
ふーっとため息を漏らし、しんみりとした顔を取り繕った。佐々木はワイドショウを見ながら仕事をしているのを目撃され、その話題にふれさせまいとしている。そんな佐々木の思惑など無視して石井が言った。
「お客さん、ええと、そう相沢さんに対して、山口はうまくやってくれた?」
その時、事務所全体がミシミシっという音を立てて揺れた。長い横揺れだ。二人は見詰め合う。「ほら、やっぱり来たわ。」
地震が止むと、何事もなかったように答える。
「ええ、万事うまくいったわ。相沢さんの娘さん、高校3年生なんだけど、ストーカーに付きまとわれているの。だからしばらくガードして欲しいっていう依頼。山口君ったらすっかり鼻の下伸ばして、ほいほい付いて行ったわ。山口君こそ何か変なことしでかさなければいいけど。」
「その家に行ったのか。」
「ええ、一刻も早いほうがいいって。」
石井は思い出した。相沢が石井を名指しで電話を掛けてきたのは、石井が綾瀬署の捜査本部を訪ねた日の午後6時頃だ。厭な予感が当たっ
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