第十二章 連続暴行魔
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、そのことも含めて話してもらわないと捜査は袋小路よ。その山口さんを捜索するためにも出頭すべきよ。そこのところはちゃんとしておいて。貴方は元刑事よ。」
「いや行く気はない。だけど情報は伝えよう。その山口君を連れ出した男を事務所の佐々木という者が見ている。まずその佐々木に当たったほうがいい。」
「まったくもう、言い出したらきかないんだから、もう何も言わないわ。」
「とにかく、全力で杉田の居所を探るしかない。忙しくなるね。暫く会えそうもない。」
「残念だけど、しかたないわ。」
もう一度あの東陽町の悟道会のビルを見ておく必要がある。顔を知られている以上、中には入れないが、せめて周辺を探っておこうと思った。目をまん丸にして驚愕の表情を浮かべる佐々木に声を掛けた。
「佐々木さん、ちょっと出かける。今日、綾瀬署の職員が君に相沢のことを聞きに来ると思うから、対応してください。今日は戻りません。」
佐々木が慌てて立ち上がり、石井を捕まえようとするが、一足先にドアにたどり着いた。
「兎に角、頼みます。」
後ろで、「愛人が射殺されたって言っていたけど、それってどういうこと?それに警察に何を言えばいいの?」という叫び声が聞こえた。
階段を駆け下りた。まずは見張りをまくことだ。石井は辺りを見回した。いるいる。男が慌てて電柱の陰に隠れた。石井はほくそえんだ。
この日は、午前中に2回、午後に5回の地震があった。石井の不安は五十嵐や山口の安否だけではなくなった。やはり、大災害はおこるのだろうか。悟道会ビルの周辺の暗がりを選んで歩きながら、石井の体がぶるっと震えた。
(二)
翌日の午前10時、捜査本部は色めき立った。とんでもない情報がもたらされたのだ。それは大竹清美の父親からの一本の電話から始まった。杉田満が清美に会いたいと連絡してきたという。清美は満の誘いに応じるふりをした。今日の昼、12時、大竹家に程近い公園で会うことになっていると言うのである。
その場にいた21名の刑事たちが一斉に立ち上がった。その中には出かける直前の五十嵐と小林もいた。誰もが興奮し、奮いたった。警視庁から戻ってきた田村警部は顔を真っ赤にしてまくし立てた。正に正念場だった。失敗は許されない。
1時間後、公園には、刑事達が、浮浪者に身をやつし、或いはうな垂れベンチに座る失業者を演じ、それぞれ工夫をこらして集まっていた。住宅の敷地に隠れている者もいる。五十嵐は咄嗟の判断で、コンビニで弁当を買い、若い桜田刑事とベンチで昼食をとるカップルを装うことにした。
桜田は26歳で五十嵐より2つ年下だが、なかなか堂にいった演技を続けている。
「五十嵐先輩とこうして一緒に弁当をつっつくなんて本当に光栄です。でも、この間捜査本部にいらっしゃった石井って人、恋人なんでしょう。」
「そん
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