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予言なんてクソクラエ
第十一章 落ちた偶像
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いた。何故自分はあんな人々と関わってしまったのか。自分のことばかり考えている人々。そして何故自分はあんな男を好きになってしまったのかということである。
 しかし、その答えは最初から分かっていた。それを引き寄せたのは己自身だと言うことを。最初の結婚も男の持つ資産に惹かれた。しかし、母一人子一人の恋人のような二人に入り込む隙はなかった。そしてこのたびは教祖の能力に惹きつけられたしまったのだ。
 まして殺人まで犯してしまった。その原因を作ったのは教祖の息子だ。殺人の嫌疑をかけられるほどの不良息子なのだ。教祖はその息子を警察の目から逃れさせるため、息子の事故死を偽装した。そして息子を何処かに隠したのだ。
あの脂ぎった顔が浮かぶ。議員秘書の浦辺一郎だ。
「坂口さくら君が私を頼ってきてね。彼女が言うには、満君は生きているらしいじゃないか。これってどういうことかね。」
「えっ、私、知りません。」
慌てて受話器を押さえて振り返った。ベッドで煙草をくゆらす教祖が怪訝な顔で見詰める。浦辺が言ったことを小声で伝えると、驚愕の色を浮かべ、
「俺はここにはいないことにするんだ。まず奴の話を聞け。」と言う。受話器にむかった。
「どういうことでしょう。」
「だから、満君は生きている。ついこの間まで坂口さくらは満君と一緒に生活していた。彼女は満君がいる秘密の場所から逃げ出してきた。つまり、ヨットの遭難事故は偽装工作だってことだ。」
「待って下さい。そんなこと私には関係ありません。そういう話なら教祖に直接お話して頂けませんか。」
怒鳴り声が響いた。
「教祖に話す前にアンタに会って話がしたいって言っているんだ。教祖が困るということはアンタも困るということだ。そうじゃないのか。」
受話器に耳を寄せ、話を聞いていた教祖が、保科に向き直って大きく口を開閉させた。最初は分からなかったが、「会え」と言っているのだ。しかたなく会う約束をした。電話を切ると、教祖が言った。
「奴の狙いは君の体だ。会うだけ会って話を聞いてくれ。何も寝ろとは言ってない。まずは会って話を聞くんだ。恐らく金の話も出るだろう。」
「でも、ホテルに連れ込まれたらどうしたらいいの。話を聞くだけでは済まないわ。」
「大丈夫だ。あんな男に、指一本だって君の体に触れさせるものか。私に考えがある。ただ・・・」
「ただ、何なの?」
 約束の日、教祖は睡眠薬を用意していた。そして、眠らせたうえで浦辺の物を勃起させろと言う。卑猥な行為に耽る姿を写真に納めろと指示したのだ。浦辺の脅迫に対抗するためだと言ったが、薬を飲んだ浦辺は意識を失い、いくら勃起させようともがいてもそれがそそりたつことはなかった。そして死んでいることに気付いたのだ。
 本当に教祖は薬の量を間違えたのだろうか。もしかしたら最初から殺す気でいたのでは?
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