第五章 失踪
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いうことに気づいた。街は煌々としたネオンに満ち、街を行き交う人々は地元と言うより観光客の方が多いようだ。
とりあえず駅前のビジネスホテルにチェックインしてネオンの街に繰り出した。居酒屋で腹ごしらいをしてネオンの街の奥底へと脚を運ぶ。10分ほど歩いてバーやスナックが密集する地にたどり着いた。情報収集にはこういう場所が最適である。
そのバーは五階建ての雑居ビルの4階にあり、ドアを少し開け中を覗くと客は5〜6人入っている。ママと思しき女性も美人だ。石井はドアを開け中に入って行った。初めての客に一瞬警戒の色を見せたが、一人のホステスが直ぐに対応し席に案内する。
「お客さん、ここは初めて?」
「ああ、富良野も今日初めて来た。」
お絞りを差し出しながら、
「お仕事なの?」と聞く。
「いや、ふらっとね。浮世から逃れたくて。」
ボトルを頼むと、鈴のような声を響かせ注文した。
「私、理沙。お客さんは。」
「長瀬だ。」
と偽名を名乗った。いつもの癖だ。
「東京からですね。」
よくよく見ると三十歳をすこし過ぎたくらいの、どこか凛とした美しさを漂わす女だ。
「私も一年前、ふらっと東京から来たの。おんなじみたいね。」
ほほえみながら水割りを作る。石井は女のうなじに見惚れた。細いしなやかなうなじは透き通るようだ。安い香水の香りに満ちたこの場の雰囲気に馴染まない。石井は聞いた。
「何故、東京から富良野くんだりまでやって来たんだ。」
「いろいろあったから。」
含み笑いをうかべ「どうぞ」と水割りのグラスを差し出す。その眼差しは石井に対する好意がにじみ出ていた。
「景気はどう?」
「どうしようもないわ。ここはそうでもないけど、どこの店も閑古鳥がないているの。」 とりとめのない話がとぎれ、ふと顔をあげると理沙の絡みつくような視線に捕らわれた。余裕でその視線を受け止め微笑んだが、実を言えば生唾を飲み込んでいた。「と、ところで、甥っ子が悟道会に入信して行方が分からなくなった。探しているんだが、悟道会の噂、聞かないか?」
すると理沙は、
「悟道会ですって、それなら聞いたことある。」
ねえねえと、隣で接客していた女に聞いた。
「美和ちゃん、あなたの山の中の実家、あの近くに大きな建物が出来たでしょう、あれ悟道会だっていう噂聞いているけど・・・?」
美和と呼ばれた女が答えた。
「山ん中は余計だけど、噂よ、噂。高い塀を巡らしているし、管理人がいて中には入れないから確かめようがないもの。管理人は悟道会との関わりを否定しているそうよ。」
隣の客が割り込んだ。恰幅の良い50年配の男だ。
「いや、あれは絶対悟道会だわ。だってたまたま車で通りかかった時、ほら、テレビで報道されていた通りの、あの白いお仕着せを着た女がチラッと
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