第三章 悟道会
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一瞬だ。
まどろんだと思った矢先、強い衝撃が顎を襲った。驚いて目を開けると、磯田が覆いかぶさるようにして、石井の衿首をひっつかんだ。
「貴様、今、笑ったろう。笑ってただろう。何を笑ったんだ。」
目に涙を浮かべている。顎の痛みがむらむらと怒りを呼び覚ます。思い切り下からパンチを繰り出した。磯田が仰け反ってソファから落ちた。磯田はすばやく体制を整え、構えた。石井も立ち上がり半身になった。
勝負はあっさりついた。蹴りを入れてきた磯田の足を、体を引くと共に両手で掴み、本来はそのまま前蹴りで金的を蹴る技だが、痔にあたるのを慮って軸足を払うだけに留めたのだ。磯田は横転して床に頭を叩きつけ、気絶した。
あわてて救急車を呼んだが、救急車が到着する前に、磯田は目を覚まし、振り切るように一人タクシーで帰っていった。翌朝出勤すると、磯田はすでに来ており、冷たい戦争の幕が切って下ろされていた。青痣を作った二人がむっつりと向かい合ったのだ。
(三)
あれから10日ほどたったが、千葉県警から再度の呼び出しはない。どうやら、磯田は写真を送ってはいないらしく、ほっと胸を撫で下ろしていた。磯田とは、あれ以来互いに口もきいていない。用事はメールで済ませている。
事務所内は緊迫した雰囲気につつまれ、龍二がやたらと溜息をつき、佐々木はその雰囲気を和らげようと大声で笑ったりするのだが、その後の沈黙が際立ってしまい、かえって重苦しさが増した。パソコンにメール受信のメッセージが現れる。磯田からだ。
メッセージはこうだ。「保科香子は毎朝10時、センチュリーハイアットの1Fラウンジでコーヒーを飲みながら新聞を読む。尚、住所・電話番号は以下の通り。」目を上げると、磯田はそ知らぬ素振りでパソコンを叩いている。石井はやおら立ち上がり
「今日は帰ります。」
と言って席を立った。二通目のメッセージなど読んでたまるかと思ったのだ。龍二が慌てて言う。
「おい、真治。飯でも付き合わんか。ちょっと話したいことがあるんだが……。」
「所長、今度にしてもらえませんか。ちょっとよんどころない会合がありまして。それから例のレポートは写真付きでメールしておきました。」
「そ、そうか。」
話とは磯田とのことだろう。龍二に何と言われようと、磯田と仲直りなどしたくはなかった。磯田は石井が保科と会うことを望んでいる。どうせ盗聴器を仕掛けるか、後をつけるかして二人の様子を窺うつもりなのだ。磯田のしらっとした顔にそう書いてある。
外にでると、携帯をとりだし三枝に電話を入れた。相手はすぐに出た。
「真治さん、大変よ。また予言が当たったわ。たった今、ニュースが世界に配信され始めているわ。」
「例のイランの大地震という予言か?今日だったのか?」
「そうよ、そんなことも忘れていたの。今、イ
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