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〜烈戦記〜
第八話 〜初陣〜
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るのか。

…簡単な事だ。
みんな自分の身が可愛いいんだ。
だからわかってはいても声があげられない。
上げても同調する人間がいなければ無意味だから。
そして同調すれば自分も巻き添えなのがわかっているから。
顔も知らない赤の他人の為に命は張れないんだ。

『…ふざけるなよ』

それが何もわからない子供でも。

『ふざけるなよ!!』

僕は耐え切れずに叫んだ。

だが、その声は2000の雑踏によって掻き消された。





村の兵士達が此方の異様な雰囲気に気付いたのか門に集まり始める。
…だがもう遅い。

ついにこの時が来た。

俺は走らせていた馬の上で期待と興奮によって張り裂けんばかりの胸の鼓動に苦しめられていた。

やっとこの名剣で人を割く瞬間が来た。
もう誰にも邪魔されない。
今だけは好きなだけ同じ人を斬る事ができる。

『…ふへ、ふへへへ』

自分でも気持ち悪くなるような笑が口元から零れる。
だが、そんな体裁なんてどうだっていい。
今は後少し先にある村の門が待ち遠しくて仕方がない。
門が近付くにつれて胸の動機が早まるのが自分でもわかった。

…あと少し。
…あと少し。


そしてその瞬間は訪れた。
門が目近に迫った所で衛兵の姿が確認できた。
今正に門を閉じようという所か。
だが、それが運の尽きだ。
俺の名剣の初めての獲物は今この瞬間に決まった。

閉まり掛けの門に素早く潜り込み、呆気にとらわれた衛兵を間合いに捉えた。

『我が名は洋班なりぃぃ!』

そして俺は剣を振り下ろした。





誰かの叫んだ声が聞こえた気がした。

僕は兵士達の波が去った後、ただ一人陵陽関を目指していた。
父さんから戦闘が始まったら戻ってこいと言われた。
だが、それ以前に僕はあの村で起きている惨劇を見守る事しかできないのに耐えられる自信がなかった。

『仕方無いんだ…どうしよも無いんだ…』

僕はずっと下を向きながらそんな事を呟いていた。
後ろは振り返らないようにしていた。
何故ならあののどかな景色が蹂躙されている風景を見てしまったらその景色を一緒忘れられない気がするからだ。

だがその意識すら今の聞こえる筈の無い叫び声に揺らいだ。

…本当に僕はこのまま関に戻ってもいいのか?
僕が今やっている事はなんだ?

僕はまたも無意味だとわかっていながらこの現場に自問自答を繰り返す。

…どうしよもない事。
だから僕に罪はない。
そう言って僕は現実から目を背けているんじゃないのか?
今僕が見ていない所で人が殺されている。
でも、そんな事を言えばこの大陸でどれだけの人間が殺されているかわかったもんじゃない。

…だから
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