第八話 〜初陣〜
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逃げるのか?
僕の知ってる所で人が殺されているのに。
僕が止められずに蹂躙されているあの村から。
僕の頭の中では"よせ""やめておけ"と誰ともわからない声で呟かれた。
だが、僕はそれでも村の方を振り返った。
村があった所からは黒煙が幾つか上がっているのが見えた。
もう、今戻っても遅いだろう。
頭の中で人々が蹂躙される光景が次々と浮かんでくる。
…だが、それでも僕は戻る事を選んだ。
僕が止められなかった責任を自分の目に焼き付けようと。
『…なんだこれ』
だが、そんなちっぽけな正義感では到底受け止めきれないような光景が村では広がっていた。
見渡せば家屋からは黒煙が上がり、火を吹き出していた。
そしてその家から逃げ出そうとしたであろう人の死体、勇敢にも戦おうとしたであろう人のズタズタな死体、今殺されたであろう死体、悶絶した表情の死体、壁に追い詰められた死体、ピクピクと痙攣する死体…集められて殺されたであろう子供達の死体。
そして僕の馬の下には赤ん坊を抱えた女の人が転がっていた。
…そして赤ん坊ごと貫いたであろう母親の身体の位置からドス黒い血が溢れていた。
『ウグッ!?』
そのあまりの生々しさに吐き気が込み上げてきた。
堪らず吐こうとしたが、目の前の死体に嘔吐物がかからないように精一杯身体を捻った。
『ウッゲェェェッ!!』
嘔吐物が馬の上から放たれてその勢いでビチャビチャと音を立てながら当たりを汚した。
馬は驚いたのかいななりを上げ、それをよけるように暴れだす。
僕はその急な馬の動きに振り落とされそうになるが、、意識が離れそうになるのを必死に耐えて静止させる。
『…はぁ…はぁ…』
なんとか落とされはしなかったものの、気持ち悪さに合わせて身体に重たい倦怠感を感じる。
そして目には苦しさで涙が溢れていたが、それによってボヤけた視界の中で色々な言葉が頭を巡った。
"僕が止めれなかったから"
"この人達はついさっきまで生きていた"
"子供まで死んだ"
『ちくしょう…ッ!どうして僕は…ッ!』
後悔が後から後から湧いてくる。
どうにもならなかったのは事実だった。
でも、それでも僕には何かできたんじゃないか。
何かを失えばこれだけの人間の命を守れたんじゃないか。
そんな気がしてならなかった。
『…ちく…しょう…ッ』
僕は馬の上でうなだれていた。
『なんだ、来てたのか』
『ッ!!』
声のする方を振り向く。
そしてその声の主は紛れもない洋班だった。
彼の顔は満足と言わんばかりに清々しい表情を浮かべていた。
そしてその手には血のりでべっとりとした剣が握られていた。
『俺はてっきり怖気ずいて関に…』
『
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