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コシ=ファン=トゥッテ
第二幕その二十一
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第二幕その二十一

「ここにいるんだけれどな」
「じゃあお芝居だな」
「今港に上がられましたよ」
「じゃあすぐにここにも」
「来るのね」
「どうしましょう、それじゃあ」
「何をすればいいの?」
 姉妹はそれを聞いてさらに焦る。その焦りのまま二人にも言う。
「どうかすぐに隠れて」
「ここは」
「隠れる?」
「私達が」
「そうよ」
「すぐに」
 こう彼等に話すのだった。
「見つかったら大変よ」
「何もかもがお仕舞いよ」
「ですから落ち着いて下さい」
 しかしここでアルフォンソがまた言う。
「ここは焦ってもどうにもなりません」
「は、はい」
「御願いします」
 姉妹はまさに藁にすがる思いだった。
「ここはどうか」
「是非共」
「さあ、今のうちに」
 アルフォンソは焦る姉妹を横目に二人に声をかけた。
「着替えておくことだ」
「元の僕達に戻る」
「そうだね」
「そう、その通りだ」
 アルフォンソは彼等にも話すのだった。
「さあ、早くあっちへ」
「うん、それじゃあ」
「行って来るよ」
 こうして二人は着替えに向かう。姉妹はその間も狼狽することしきりだった。
「考えても考えても」
「困ってしまうばかり」
 姉妹の焦りは続いている。
「どうにもこうにも」
「若し嘘がばれたら」
 そんなことを言っている間にだった。二人が軍服になって戻ってきた。ところが二人の軍服も帽子も外套も奇麗なもので剣の柄もピカピカとしている。だが狼狽することしきりの姉妹は全く気付いてはいない。
「やあ、只今」
「すぐに戻って来れたよ」
 二人はにこやかな笑みを作って焦ったままの姉妹に対して告げてきた。
「君達のところにね」
「元気だったかい?」
「おお、二人共無事で何よりだ」
「戦争は回避されたよ」
「政治の方で話がついたみたいで」
 こうアルフォンソに話す。そもそも戦争なぞなっていないから当然である。
「おかげでもう帰って来れたよ」
「一日だけだったけれど楽しい船旅だったよ」
「そうか。それは何よりだ」
「うん。それにしても」
「君達はどうしたんだい?」 
 二人はここで顔を真っ青にさせている姉妹に顔を向けるのだった。
「何か凄く焦っているようだけれど」
「どうかしたのかい?」
「嬉しさに混乱しているんだよ」
 アルフォンソはこう取り繕う演技をした。
「それはな」
「それでなのか」
「それで」
「心臓が今にも止まりそう」
「どうにかなってしまいそうよ」
 姉妹は実際に心臓の鼓動を止めることができなくなっていた。顔から冷や汗がしきりに流れて止まることがない程であった。そこまで狼狽していた。
「どうしたらいいの?」
「このままじゃ本当に」
「とりあえず荷物をね」
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