十九話
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「では僕はこれで。ああそう、なかなかに筋は良かったですよ。一通りの型は見事に収めています。門下生の中では一番だと思いますよ。もっとも、他全員を見たことがあるわけではありませんが」
そう言ってサヴァリスは去っていった。ガハルドは汗を滴らせるほどだというのに、息一つ切らずに。
無人になった道場の中、ガハルドの中には二つの思いが渦巻く。
サヴァリスからの言葉に対する喜びと、一人の武芸者に対する嫉妬と憎しみ。
「レイフォン・アルセイフ???ッ!!」
ガハルドはその名を呟いた。
「今日何かあったんですか?」
いつもとは違う周囲の雰囲気に顔なじみの男性に話しかける。
「今日チャンプの試合があったんだが急にキャンセルになってな。その性で苛立ってるやつらが多いんだよ」
「ああなるほど」
妙に殺気立っているような気がしたのはそのせいか。自分に向かう殺気もその性だろう。
「明日の午後大会あるだろ。ほら、天剣決めるやつ」
「はい」
「その前夜祭を狙って今日は開いたし、チャンプの試合やって盛り上げて売上狙ったんだがそれが狂っちまったよ。だからまあ、我慢してくれや坊主」
そういうことなら自分に出来ることはない。まあ、何時も通りにやればいいだろう。
それと一つ、今の話にも関係がある事で確認したいことをレイフォンは男性に聞く。
「前、僕は一年半で出禁になりましたよね」
「ああ」
だから? という風に見てくる男性にレイフォンは言う。
「なら、その時よりも上の地位に、もっと凄い名誉とか持ってたら、今度はずっとここで稼げますか?」
レイフォン言葉に男性は頭を掻き、なるほどね、と呟く。
「ああ稼げるさ。こっちを稼がせてくれるなら断る理由はねえ。金づる離すかよ。情でやってんじゃねぇんだ。邪魔になるなら速攻切るし、使えるなら残す」
「分かりました」
それさえ聞ければ十分だ。
今日は一試合だけ。さっさと終わらせて明日に備え帰るとしよう。
レイフォンは場に進んでいった。
「レイフォン・アルセイフだな」
暗い帰り道。レイフォンは呼びかけられた声に振り向く。
ローブを被った一人の……声から見るに男性がいた。
纏った雰囲気からして明らかに普通の要件ではない。手が錬金鋼に伸びる。
「生憎、今日は荒事をするつもりはない」
「信用しろと? 顔を隠した相手に言われても困る」
「顔なら見せる。とりあえずその伸ばした手を下げろ」
男がフードを取る。どこかで見てような気がすると思いながらレイフォンは錬金鋼から手を離す。
「明日お前は天剣を決める大会に出る。だが実力が一歩及ばず決勝で善戦
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