十九話
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始めようか」
ジャルードが慌てたように声を出す。
「で、では、自分はこれで失礼します!!」
ジャルードが道場を去っていくのを合図にしたようにサヴァリスが口を開く。
「そう言えば君と稽古をつけたことは一度もなかったね」
その通りだ。サヴァリスはガハルドの兄弟子ということになっているが、一度として世話をされたことがない。遠めに見ることができただけだ。だがそんな事は気にならなかった。
「あいにく僕は人に教えるというのが苦手でね。好きに打ち込んでくるといい」
そう言いサヴァリスが手を下ろす。一件何の構えもしていないように見えるがそれで十分なのだろう。
言われた通りにガハルドは自分の全力を込め打ち込んでいく。
だが、その全てが防がれる。
ガハルドは力を尽くし打ち込んでいるというのに、サヴァリスは表情を変えずその全てを受け止め、相殺し、弾く。
「今思い出したけれど、確か君は弟の兄弟子でもあったね」
「はい。不肖の身なれど稽古をつけさせていただきました」
よく自分を慕ってくれた無骨なれど気のいい少年だった。確か今はどこかの学園都市に行っているはずだ。
「いずれ自分も抜かされるのではと筋の良さを実感しました。流石は若先生の弟です」
「弟、ね……」
どうでも良さそうにサヴァリスが呟く。その間もガハルドは攻め続けるが、その全てが捌かれる。
不意にガハルドは気になったことを口にする。
「今日はどうしたのですか? 何といいますか、気分が良さそうな気がしますが」
いつものサヴァリスなら道場に来ること自体が希で、稽古をつけるなどそれ以上希だ。そもそもサヴァリスが誰かに稽古をつけるなど、彼の弟であるゴルネオ以外にガハルドは知らない。
そんな疑問にサヴァリスが答える。その心を抉るように。
「レイフォンが天剣決定戦に出るということを知りましてね。つい気が昂りましてね。ああ、レイフォンと言っても分かりませんか」
「いえ……」
言葉を濁すようにガハルドは言う。
そんなガハルドを無視しサヴァリスが続ける。
「今度は乗り気の様ですし決まるでしょうね。同僚になるわけです。昔は違いましたが、今なら戦える土壌もある。いや、待ち遠しい限りです」
「……」
ガハルドは無言で攻め続けていく。口を開けば何か言ってしまいそうだ。
僅かに乱れたガハルドの拳を弾き、サヴァリスが初めて攻勢に出る。只一撃、ガハルドが腕を払われたと気づいたときには腹に衝撃が走っていた。
「これで終りとしましょう。レイフォンほどではありませんが、まあそこそこには楽しかったですよ」
「……ありがとう、ございました」
腹に残る痛みをこらえながら立ち上がりガハルドは礼をする。
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