十九話
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…とレイフォンはアイシャの右目を見る。琥珀色の左目とは違う“紫紺”の瞳。何故なのかは分からないが色が変わったらしい。視力の面では問題がないという。
火傷がなくなったため髪で隠すという事はしていない。まっすぐに下ろされた前髪の隙間から覗くその二つの要素でどこか不思議な雰囲気が一層強くなったとも言えるだろう。
「頑張ってね」
「ありがとう」
アイシャが再び本に視線を戻し続きを読んでいく。よくそんなに勉強をする気になれるなとレイフォンは思う。
まあ、そこは人それぞれなのだろうけど。
(四週間後か……)
先のことを思いレイフォンはため息をついた。
レイフォンが通達を受けてから暫く。
振るわれる拳を受け止め相手の足を払う。
頭を狙い放たれた蹴りを腕でいなし懐に潜り込み腹に一撃を入れる。
腕を構え、そこめがけて放たれる剄の塊を一つ一つ最小の剄でもって相殺する。
相手の隙を狙い、虚を払い、未熟さを技巧で受け止める。
一通りの型を追え、息も絶え絶えになった相手が立ち上がり礼をする。
「ありがとうございました、師範代!」
「ああ。お前はまだ伸びる。気を抜かず一つ一つ高めていけばいい。焦る必要はない」
「はい!」
ルッケンス流師範代???ガハルド・バレーンの言葉を受けた門下生は尊敬する兄弟子の言葉に喜びの色を浮かべながら体を崩さない。
そんな弟弟子の姿にガハルドは引き締めた表情は変えないながら内心笑みを溢し???唐突に現れた背後の気配に体を強ばらせた。
「???ッ!!」
「久しぶりに見たけれどちゃんとしているようだね」
強ばった体も一瞬。聞こえてきた声に振り向き、思わず声を上げてしまう。
「若先生!」
「サヴァリス様!?」
弟弟子のジャルードが驚きの声を上げるがそんな事に気を払えない。
何故? と思ったのも一瞬。今までの稽古が見られていたとつい恥ずかしくなる。自分はこの人の前で無様を晒していたのではないか、と。
そんなガハルドの思いを知ってか知らずかサヴァリスは小さく嗤う。
「師範代ですらない身で先生、か。奇妙なものだね」
「いえ、そんな事はありません! 若先生はここの皆の憧れです!!」
そして勿論自分にとっても。
「それにしても、今日はどうしてここに? 前もって言ってくだされば出迎えしたものを」
「ああ、気まぐれだから気にしなくていいよ。……そうだな、気まぐれついでによければ稽古をつけてあげよう」
いらないならば別にいいが、とサヴァリスは続ける。だが、そんなはずはない。嬉しさにガハルドの身が震える。
考えるまでもなくガハルドは答えていた。
「お願いします!!」
「うん。じゃ、
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