十九話
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も良いと女王は言っていました」
「本当ですか?」
「ええ。最低でもその家族は保証すると」
魅力的な条件にレイフォンの考えが揺れる。
実際問題、出稼ぎで稼いだ金が結構まだある。それだけで考えるならアレだが闇試合のもある上、ある意味定期的に入る収入を考えれば決して少ないわけではない。天剣は高給取りでもあり、過度な贅沢をしなければ普通に生活していく分にはあるはずだ。
それでも……と思うところはある。可能な限りたくさんの金額を手に入れたい。だが、家族の分が保証されるというのならまずはそれで良いのではないだろうか。
一度に多くを望みすぎるのは良くないと出稼ぎに出て学んだ。それに闇試合のこともある。天剣という名声があれば、今度はずっと居続けられるかもしれない。グレンダンを離れずに済むかもしれない。
自分がいない間弟たちが寂しがっていたとリーリンから聞いた。可能ならもうそんな思いをさせたくはない。なら、これはいい話なのではないだろうか。
「……分かりました。参加したいと思います」
「それは良かった」
クラリーベルが笑顔を浮かべる。子供たちは微妙に違えど彼女としてもレイフォンが天剣になるというのは嬉しいのだ。
では、とクラリーベルは帰っていく。クラリーベルは今日この連絡の為だけに来たのだ。
「今度は隠さなくていいのかな……」
前のことを思い出しレイフォンは呟く。天剣になるのが目的ならば出し惜しみする理由もない。立ち向かう相手を全力で屠ればいいだけだ。
騒ぐ弟たちを適当に宥め隣の部屋に行く。養父には夕食の時にでも伝えればいいだろう。レイフォンはデーブルの上に用紙を起きソファに座る。
すると反対側に座っていたアイシャが読んでいた本から顔を上げ用紙に目を移す。
「天剣になるの? レイフォン」
「うん。まあ、まだ決まったわけじゃないけど」
「大会でもずっと優勝してる。成れると思うよ、レイフォンなら」
真っ直ぐにレイフォンを見てアイシャが言う。
レイフォンが見返すその顔に火傷の痕はなく、右目は開いている。
クラリーベルに紹介された病院で検査を受け手術を受けたのだ。詳しいことは知らないが、なんでも体細胞を分化させ養培して作った眼球を入れたとか。皮膚の方も火傷はそこまで酷くなく培養した皮膚を移植したらしい。その御蔭で元々の綺麗な容姿はほとんど戻り、まるで人形を思わせるような整った顔が戻っている。
ほとんど、と言うのは完璧に治ったわけではないからだ。最初から比べれば多少薄く、細くなったがまだ右目の上を走る一本の爪痕は残っている。爪跡は火傷よりも傷がかなり深く表面だけの移植では済まず治すには別途で金が必要であり、負担になるから別にそれくらいはいいとアイシャが断ったのだ。
それと…
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