十九話
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考える。少しずつ距離をとって人のいる方に逃げようか? 流石に二人も一般人を巻き込むような事はしない。戦闘は止めるだろう。だが、次からが怖い。凄く怖い。
思わず腰の青石錬金鋼に手が伸びかける。未だ使ったことはないが既に鋼糸は実戦で使えるだろうレベルにまで達している。これを使えば逃げられる可能性は非常に高い。だが、まだこの二人相手に自分は鋼糸を使ったことがない。使えば喜ばせるだけということを嫌というほど学んでいるので使うわけには行かない。そんな情報を与えるわけにはいかないのだ。内心泣く泣く伸びていた手を戻す。
腰を落とし、踏み込み、飛び、下がり、時には衝剄を放ち真空の刃を躱していく。上手く避けきれずピリッとした痛みが頬に走る。掠ったのだろう。血が流れる前に活剄で傷を塞ぐ。息が荒い。蹴りを放つたびにサヴァリスは嬉しそうな顔をするがレイフォンは全然嬉しくない。疲れと憎しみが溜まっていく。今にもサヴァリスを殴りたいくらいだ。
何とか避け切り、サヴァリスが最後の一撃を放つ。同時にレイフォンも一つの剄技を放つ。
???ルッケンス流・風烈剄
凄まじい程の剄が込められた不可視の高速の風がレイフォンを襲う。だが、
???ルッケンス秘奧・千人衝
剄による実体のレイフォンが肉の壁のようにそれを遮る。文字通り肉の壁として消えていったレイフォンが目くらましとなり、その横から本物のレイフォンが抜け出す。積もり積もった憎しみを込め全力の閃断をサヴァリスに向けて放つ。
「死ねぇぇーっ!!」
殺意全開である。
まるで空間さえ切り裂くような密度の剄の刃。ここが屋根の上という空間でなければ周囲に大きな爪痕を残していただろうというほどのそれがサヴァリスに向かう。
通り過ぎた空間の風を分かち、一瞬遅れ風の壁を破壊する音を出しながら進むそれは生半可の武芸者なら起きたことを理解できず切り裂き、汚染獣なら一刀の元にその命を奪うだろう。もはや閃断でなく別の技にまで昇華しそうなほどの剄の刃。
だがその刃を前にサヴァリスは満面の笑みを浮かべ、両の手に凄まじい密度で剄を巡らす。そしてあろうことか刃の前から動かず手を構え????刃を手で挟み込んだ。
「えぇ!?」
レイフォンが驚きの声を上げる。
挟み込まれた刃は手に込められた剄とぶつかり合い、衝剄となって周囲の空気をかき乱す。その余波を受けサヴァリスの髪が狂ったように波打つ。刃は手に作られた剄の壁に止められ左右から押されその勢いをなくしていく。ついには消え去る。
言うならば、秘技・真剣白刃取り。
まるで何事もなかったかのようにサヴァリスはくっつけていた手のひらを離しパンパンと叩く。
「意外と出来るものですね」
「いやいやいやいやいや」
つい突っ込んでしまう。
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