十九話
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渡そうとしてアイシャが目をしきりに撫でていることに気づく。
ミルクを近くの台の上に置き尋ねる。
「目がどうかしたの?」
「昼過ぎからチクチク痺れている。その性で眠れなかった」
「傷が痛むのかしら。昨日までもそうだったの?」
撫でているのは右目だ。もしそうだったら同室の自分が気づかなかったことになる。
リーリンは内心申し訳ない気持ちになるがアイシャがそれを否定する。
「昨日まではなかった。堪に痒いだけ、一瞬で止まる。今みたいに痛くない」
「どんな感じなの?」
「内側が膨れて、チクチクする感じかな」
「ちょっと見てもいい? 何かゴミでも入ってるかも」
ヨルテムで医者に行った際時間の関係でちゃんとした対処は出来なかったが簡単な塗り薬をアイシャは貰ってある。本人はそれを使わずともたいして痛みや痒みを訴えていないが何かるかもしれないし、単純にゴミが入っただけかもしれない。
近づいてアイシャの目を覆う髪をかき分ける。特に何も言わないということはそういうことなのだろう。
アイシャの背はリーリンよりも少し低い。だからアイシャは顔をやや上に向け、それを見やすいようにリーリンは頬に手を当てて目を見る。
見るたびに痛ましい。右目を中心に肌色と茶色が混ざった様な色の荒れて固まったケロイド状の皮膚。そしてその中でも分かる右目上を走る一本の溝。固まった皮膚の性で右目はほとんど開けない状態だ。仮に開けたとしても一目で深いと分かる溝を刻む爪痕が眼球自体に傷をつけている以上物を見ることは絶望的だ。
痛ましい惨状。無事な部分の顔から見る分に整った造形の綺麗な顔であることが余計にそれを思わせる。火傷の範囲がそれほど広くなく、あえて伸ばした前髪を垂らせば何とか隠せる程度の大きさであることがせめてもの救いだろう。
リーリンはアイシャの右目の辺りを見るが特に何も見当たらない。ろくな知識のない自分だから何も分からないだけかもしれないが、少なくとも何かゴミが入ったり化膿が進んだりしているというわけではないようだ。
弟たちが怖がる傷跡。確かに近くで見ていて気持ちの良いものではない。だけど、だからといってそんな思いは持ちたくない。
そんな思いが無意識にさせでもさせたのかリーリンは指でその傷跡に触れる。近づくように、近づけられるように。
まるでアイシャの痛みが移ったかのようにチクリと右目が痛む。
思いを込め優しく撫でる。
????どうか安らかに、と。
「ん……何、リーリン」
「え? あ、ごめんなさい」
アイシャの声にリーリンは自分のしていた行動に驚き手を離す。ほとんど無意識の内での行動だったのだ。
自分の行動を不思議に思いつつもアイシャに見た結果を言う。
「特にゴミとかはないみたいね」
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