十九話
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こんな遅くに」
パジャマを着たアイシャだ。
普段なら彼女はもうすでに寝ている時間だ。眠い時にやるように目を抑えている彼女にどうしたのかと聞く。
「眠れなくて、喉も乾いた。何か飲もうと思って」
「私と同じね。ミルクでも入れる?」
「お願いする、リーリン」
了承を受けもう一つミルクを温める。
砂糖はどうしようか。用意したほうがいいか聞こうと思い、不意に今のやり取りが気にかかる。
リーリン、とアイシャは自分のことを呼んだ。それに対し自分はさん付けだ。苦手意識こそ余り無いものの未だ自分も彼女との間に距離を感じているということだ。下の子供たちの事を言える立場などではないなと反省する。
そこまで社交性のある性格ではないレイフォンでさえ既に呼び捨てしているがそれは仕方ないのだろう。
レイフォンから聞かされたアイシャの話。汚染獣に滅ぼされた都市で死体に囲まれ生き残った少女。
見つけるのが後少し遅ければ汚染獣に喰い殺されていたらしい。見つけた部屋も酷かったという。レイフォンは余り語らなかったが言い淀んだ様子からその酷さを理解した。今でさえ儚さを覚えるような細身だが当時はそれにもまして病的に体が細かったと聞いた。
眼を爪で刻まれ、死体に囲まれた中汚染獣が迫りその牙で喰らわれるという恐怖。そしてそこから助けられたという奇跡。
グレンダンという世界。天剣授受者、女王という存在がいる環境で生きてきたリーリンにとってその恐怖は想像が出来ない。
天剣がいる以上自分たちの身の安全は保証されており、汚染獣の来訪も民にとっては一種のイベントの様なものだ。孤児院の下の子供たちですらそう思っている。身を案じる事があればそれは自分ではなく幼馴染が怪我をしないかということだけ。それでさえ周りからは心配のしすぎだと言われてしまうほど。
だからきっと、彼女が置かれた現状はそんな程度ではなく、想像し共感しようと思うことすらおこがましいのだろう。だからこそ、助けられたときはどれほどだったのか。
それを思えばアイシャの性格も理解出来る。そんな奇跡的な出会いをしたら惹かれるのは当然だし、した側のレイフォンも距離が近いのは納得できる。仕方ないか、と思え、自分の思いに敵対するかもしれないというのに逆にリーリンは仲良くなりたいと思えてしまう。端的な話し方に、真っ直ぐに思いを隠さずに話す所など整った印象も含め同年代なのに可愛いなとさえ思ってしまう。
仲良くなりたいとリーリンは思う。出来るなら自分だけでなく院のみんなとも、クラリーベルとも仲良くなって欲しいと願う。そう言えば彼女は今日アイシャの目の事などを安じてくれていた事を思い出す。帰る間際のことだ。
そんなことを思っているとミルクが温まった事を告げる音が鳴る。取り出し、一つ
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