十九話
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「分かった、ありがとう。でも平気だから」
「ええ。そう願います」
アイシャの髪をクラリーベルが触る。
「綺麗な髪ですね。……では、今日はこれで。リーリンに一言言って帰ります」
そう言い、クラリーベルは部屋から出て行った。
一体何なのだろうかとレイフォンは思うが、きっと自分にはわからない女性的な何かがあったのだろうと結論づける。
クラリーベルがアイシャと仲良くしようとしてくれるのはありがたい。クラリーベルは孤児院の子供達に馴染んでいる。だから仲良くしてくれればアイシャが馴染むのも早くなるはずだ。物怖じしない彼女のこと、火傷のことなど一切気にしないだろから有難い。
特に心配するようなことはなかったなとレイフォンは思う。戦いがなく終わったことはありがたい。後で何かアイシャに好きなものでも聞いて作ろうと決める。
ああ、本当に何もなくてよかった。
「僕はどうしましょうかね。やっぱり一勝負やりません?」
「早く帰って下さい」
残っていた一人にレイフォンは言い放った。
夜は静かだ。
日中の活気が消え光は落ち闇が辺り一面に蔓延る動く者の減る時間。
他都市から見れば異端な所の多々あるグレンダンでも一般的な生活自体は他都市とさほど変わるところはない。夜になれば道を歩く人は減るし賑やかさもなりをひそめる。窓を開けば暗い世界の中で街灯や店の明かりがポツリポツリとその光を放っている。今この時間でも賑やかな場所があるとすれば飲み屋やアウトローな場所だろう。
日中の暖かさも既にその余熱は過ぎ去り通り抜ける風が肌に僅かな冷えを訴える。
そんな真夜夜の時間、リーリンは起きて台所にいた。
子供の多い孤児院において就寝時間は比較的早い。夜更かしすることはあっても基本十二時を回る前には殆どの子供たちは自発的に、あるいは自然と眠りにつく。院長のデルクは武芸者で有りある程度規範だった生活を送っている。その為十二時を過ぎた今頃は孤児院の中は静まり返る。
そんな中リーリンが起きていた理由は大したことではない。今月の家計簿を纏めていたら計算が合わず、それが気になって調べていたら予定よりずっと遅くなったのだ。結局は領収書が一枚なかったというだけであり、既にそれも見つけ要件は終わっている。
せっかくだからとリーリンは寝付きをよくするために温めたミルクを入れる。砂糖を入れるか迷うが、夜遅くに糖分は……と思い止める。乙女にとって脂肪は大敵だ。
温まるのを待っていると、ふと暗闇の中に誰かがいるのに気づく。
誰だろうかと思っていると相手はこちらに気づいたらしく一瞬止まった後に歩いてくる。
見えた顔にリーリンは相手の名前を呼ぶ。
「どうしたのアイシャさん?
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