Episode2 信頼?
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どうして座るんですか?まだお仕事ですか?」
「お仕事?…じゃないけど、こっちで寝るから」
「えーっ、なんでですかー!」
「やっ、なんでって…」
ベッドから起き上がったアカリが俺に近づく。どういうわけか、さっきと打って変わって不機嫌な表情。まったく、コロコロと表情の変わる子だ。
「ほら、あれだ。俺がいると狭いだろ、なっ?」
我ながらナイス説明!と思ったのも束の間、狭くありませんっ!と即答及び断言したアカリが俺のシャツの裾を掴んだ。
「ほらほらっ。来てくださいよっ!」
「下さい…ってか、実力行使では!?」
グイグイとシャツが伸びるのなどお構いなく引っ張られ、ベッドの前まで連行された。見上げるはにかんだような笑顔に反則だ、と思いながらも大きくため息を付いてベッドに横になった。側面が壁に密着しているので全力でそちら側に寄る。空いたスペースにちょうどアカリが収まったため、小説なんかによくある『隣の子が寝てからベッドを抜け出す』的なことは不可能になってしまった。
「これでいいのか?」
「はいっ!」
お互い寝転んだせいで非常に顔が近い。同年代以上が相手なら赤面しっぱなしの距離だ。今でも顔に出しはしないものの、かなりドキドキしている。
そんな俺をよそにニコニコとしていたアカリが一つ小さな欠伸をした。丁寧に手で隠すが動作で分かる。
「寝られそうか?」
「ふぁい…カイトさんがいますから……」
アカリのおかしなまでの俺への無防備さに思わず苦笑する。シスイに昼間言われた『人畜無害』という言葉が頭をよぎった。
―――なるほど、俺は人畜無害系な人で間違いないみたいですよ、シスイさん
そんなことを考えていた俺の前でいつの間にかアカリは瞳を閉じていた。まるで小動物のように口元を小さく動かし、パパ、ママ、と寝言を呟くとそのあとには寝息ばかりが続いた。
――もしかしたら、俺はこの子の父親と重ねられているのかもしれないな
まだそんな年でもないのだが、ここまで人に頼られたこともないためにアカリの態度は素直に嬉しい。
信頼、という言葉が続いて頭に泡のように湧いた。その泡が頭をたゆたうのをなんとなく意識していると、さっきまでの緊張が嘘のように睡魔が襲い、アカリの寝息に同調するように俺も意識を沈めていった。
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