第一幕その五
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第一幕その五
「その夜の煌く女王の娘」
「その通りです」
「そしてこれがです」
「この方です」
そうして何処からか肖像画を出してきた。タミーノはその絵を見て一目で心を奪われた。そうしてそのうえで恍惚として言うのだった。
「この絵姿の心奪う美しさは見たことがない。この神々しい姿が僕の胸に新しい感動を呼び起こさせてくれる。この気持ちは名づけようがない」
はじめて沸き起こる感情であった。
「僕はここで炎の様に燃え盛るのを感じる。まさかこの感情が」
その名前は彼もわかっていた。
「恋なのか」
それではないかというのだ。
「そうか。これが恋なのか、この人を見つけ出して会えたら」
そうすればどうなるか。
「僕は温かく清らかになれる。恍惚に満たされて熱い胸に抱き寄せて。彼女は永遠に僕のものになるんだ」
「それでは美しい若者よ」
「いいですか?」
「それで」
侍女達はそれぞれ言うのだった。
「勇気と不屈の心で用意を整えるのです」
「女王様は貴方の言葉を全て聞きました」
「そしてです」
「そして?」
「貴方を知りました」
「ですから」
タミーノに優しい言葉で述べていく。
「勇気と雄雄しさも持っているならば」
「優しさだけでなく」
「王女様を救われるだろうというのです」
「僕が彼女を」
「そうです」
まさにその通りだというのだ。
「ですから今こそ」
「あの悪人の手から姫を」
「悪人!?」
タミーノはその悪人という言葉に反応した。
「それは一体誰なんですか?」
「恐ろしい悪人です」
「それが王女様をです」
「さらったのです」
「姫をさらったというのか」
それを聞いたタミーノはいよいよ真剣な顔になった。
「それなら僕がです」
「救われるというのですね」
「姫を」
「勿論です」
右手を強く握り締めての言葉だった。
「その為にも是非」
「お待ち下さい、今です」
「女王様が来られました」
「夜の女王様が」
そしてだった。今黒い服に星の瞬きをちりばめた小柄な女が中空に出て来た。星の輝きは様々な色でまさに夜である。
細く流麗な顔をしている。灰色の目は大きくはっきりとした二重で黒い流れる様な髪である。その髪に黒いやはり星の瞬きのある冠を被っている。
その女王が現われてだ。パミーノに対して優しく言うのである。
「若者よ、恐れることはないのです」
「あれがなのですね」
「はい」
「夜の女王様です」
「我等が主です」
侍女達はかしずきながらタミーノに答えた。タミーノは呆然と立って見上げておりパパゲーノは錠に苦しみ続けている。
「あの方こそ」
「そうなのですか」
「フム!」
「御身は穢れなく賢く謙虚です」
タミーノに声を送り続ける。
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