第一幕その四
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第一幕その四
「いや、おいらをそんな目で見ても無駄だよ」
「無駄?」
「おいらは強いよ」
一目で虚勢とわかるがこう言うのだった。
「千人力だからね」
「千人力?」
「そうだよ。強いんだよ」
「それじゃあこの大蛇は君が」
タミーノはそれだけの力があると聞いて述べるのだった。
「倒したのかい?」
「あ、ああ。そうだよ」
調子に乗ってでまかせを言う彼だった。
「その通りさ」
「それは凄いね」
そしてタミーノはその話を信じた。
「いや、かなり」
「そうだろう?おいらは強いんだ」
両手を誇らしげに掲げさせての言葉だ。
「だからね」
「ちょっと待ちなさい」
「パパゲーノ」
「何を言っているのかしら」
しかしここで。三人の美女達が出て来た。そうして彼の名前を呼んだのだ。
「またそんなことを言って」
「おや、これはどうも」
パパゲーノと呼ばれた彼はまずは彼女達に一礼した。
「暫くぶりです」
「この人達は?」
「さっきお話した女王様の侍女の方々なんだよ」
パパゲーノは気さくに笑ってタミーノに話した。
「毎日おいらから鳥を手に入れてその代わりに葡萄酒とパンと甘いイチジクをくれるんだ」
「そうなのか」
「今日はです」
「葡萄酒はありません」
その三人の侍女達が厳しい声でパパゲーノに告げてきた。
「言っておくますが」
「今日は水です」
「そしてパンではなく石です」
「それをあげましょう」
「えっ、石をですか!?」
それを聞いて思わず声をあげたパパゲーノだった。
「何で石なんですか?そして水って」
「それにイチジクの代わりにです」
「これをです」
こう言って彼の口に金の錠だった。早速それで喋れないようにしたのだった。
「フム!」
「何故こうしたのか」
「それは嘘の罰です」
「御前がこの大蛇を倒したなどと」
「よく言ったものです」
それへの罰だというのだ。
「他人の勇敢な行動を己の手柄にする」
「そんな罪は許されません」
「だからこそ」
あくまで厳しい彼女達だった。
「女王様からの御命令です」
「わかりましたね」
「フム!」
「そしてです」
「貴方ですが」
タミーノには一転してだった。優しい声をかけるのだった。
「この大蛇を倒したのは私達です」
「そして貴方にです」
「御願いがあるのですが」
「僕にですか?」
タミーノは侍女達の言葉に怪訝な顔で返した。
「それは一体」
「我等が姫を助けて頂きたいのです」
「パミーナ様を」
「女王様の御為にも」
「パミーナ王女」
タミーノも彼女が誰なのかすぐにわかった。
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